「まちづくりはおもしろい」という言葉がある。私自身そう感じてこの仕事をしており、まちづくりを素材とした映画やあってもよいのにと思っていた。この小説で改めてまちづくりのドラマ性を感じた次第。小説からまちづくりに関心を持つ人が増えることも期待したい。
舞台は東京のとある商店街。シャッター通りと化したまちを現役を退職した7人のエキスペリエンツ(知識や経験をもった熟達者)が再生する話である。筆者は「団塊の世代」という言葉を生み出したことでも知られ、小渕内閣、森内閣では経済企画庁長官として日本経済を牽引してきた。筆者はあとがきで「団塊の世代に関する官僚や識者の見通しは、いつも間違えて来た」「だから、今唱えられている『団塊の世代お荷物論』もまた間違い」だと指摘する。
2007年は団塊の世代が定年退職を迎えることから、2007年問題とも呼ばれ、大量の退職による生産活動の低下やそれに伴う経済成長率の低下、技能の継承、退職一時金等の負担の増大、さらに社会負担の増大など悲観的に捉えられる面があるが、一方で、大量の退職者が地域社会での生活が中心となることから、まちづくりにおいてこれら人々の活躍が期待されている。
小説の内容は東京だから成立するという部分があり、我々のまちではこんなにうまくはいかないと思う部分も多いが、まちづくりの可能性を示し、まちづくりに取り組む人に元気を与えてくれる。
日経ビジネス連載中のタイトルは「ジ・エキスペリエンツ−夢縁の人々」。職業職場の縁でつながる職縁社会から、これからの知価時代は夢の縁でつながる夢縁社会だという。夢の実現にむけてまちづくりに取り組む人が大いに増える。団塊の世代の定年はまちづくりが大きく進展するきっかけになることを予感させる小説だ。
|