リナックスは、利用者が自発的にネット空間にOSプログラムを公開し改善が重ねられていることで有名である。この情報の共有化とボランタリーな人と人とのつながりによって支えられた問題解決の方法や思考は、企業や行政とは全く異なる。それには住民主体のまちづくりにも共通するプロセスが含まれている。現在、企業や行政の仕組みが行き詰るなかで、それに変わる情報の共有化とボランタリーな人と人とのつながりに支えられた仕組みが注目されつつある。
本書は、住民みずから高齢者サービスセンターの必要性を市に提案し、施設の建築設計を専門家と協働による議論を進め、完成後のセンターの維持管理を実現させ、さらには公的なサービスが行き届かない人たちを対象にしたサービス提供を開始させるまでに発展した東京町田市のケアセンター成瀬の事例などを盛り込みながら、ボランティアによって獲得できる経験や人と人とのつながり、共有された情報から形成されるコミュニティーが企業や行政が解決できない問題を解決できることを分かりやすく説明している。
今後、まちづくりの仕組みを再構築してみたいと考える人、草の根の活動をしてみたいと思っている人、住民参加のまちづくりをすすめているけれども、「計画倒れ」になって悩んでいるプランナーの人にも、ぜひ読んで欲しい一冊である。
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