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シティプロモーション 地域の魅力を創るしごと/河井孝仁著
  東京法令出版/平成21年12月発行

 自治体におけるシティプロモーション、シティセールスの動きが最近、活発になっていると感じる。仙台市や川崎市、北九州市、浜松市などでは数年前から専門の部署をおいたり、戦略プランを策定したりして積極的に取り組んでいる。
  本書は、こういった自治体レベルのシティプロモーションの考え方について、その必要性から、成功へ導くための要素までを、非常に分かりやすく整理しており、どういう視点で考えればよいかを理解するにはよい本である。特に成功のための重要な視点として、マーケティングの発想の重要性が指摘されている。プロダクトフローやセグメントプロモーション、AIDMAなどの考え方を挙げ、例えば定住など自治体が本当に売りたいものにまで受け手の意欲を辿り着かせるためにも、行動や意識の変化に応じ、まずは観光に来てもらうなど段階的に関心を誘っていくような情報発信やモノの売り方などが必要であるという。同時に、そういった外への発信だけではなく、内側の市民の関心も再度地域に接続しなおし、住んでいる人の満足度を高めるなどプライドや納得を育てることも重要としている。それらを含めた総合的な魅力づくりの戦略がシティプロモーションであると位置付けている。
  事例も多数取り上げられているが、成功事例よりも発展途上の事例が中心で、著者が提供するマーケティングなどの成功の要素と照らし合わせながら、課題の指摘などがされている。そのため、シティプロモーションを既に実践しているが戸惑っている人にとっても、ケーススタディとして大いに役に立つ内容となっている。当然、シティプロモーションとは何かを学ぶのにも適している。ただし、本書は考え方の提供がメインであるため、マーケティングなど実際のノウハウを学ぶには、もうワンステップ上の専門書が必要だと感じた。

(2010.7.5/櫻井高志)