昨今多くの自治体が、シティプロモーション課や室をつくり、専任スタッフを置き、いよいよ
本格的に自分達のまちのPRに取り組みだしてきているという。そこには、少子化による
人口減少が進み、多くの自治体が活力を失ってきており、「人口の増加」などの具体的な
成果が一層求められるようになってきた背景があるという。また、成果を上げるために
各地域が売り出す商品となる、地域の魅力やブランドといったコンテンツは、長い歴史の
中で既に多くつくり上げられてきたと編者は考えており、これからは、いかにこれらの商品を
戦略的に販売していくかが重要であるというのである。
本書は前半で、未だ萌芽期にあるというシティプロモーションのありようを探るとともに、
社会的、経済的な面でシティプロモーションが果たす効果について述べ、後半で13都市・
地域の事例を紹介している。中でも、シティプロモーションを成功させる上で、市民に
地域への愛着を深めてもらうことや、市民のコンセンサスを得ることが重要になるという
部分は、本書の中で核となる部分の1つだろう。一般的にシティプロモーションというと、
訪問者や移住者増加による経済的効果を狙った、行政主体の広報活動が中心であるが
ために、「シティプロモーションは『行政がやるべきことだ』という錯覚に陥りやすい」という。
しかし、地域の魅力というのは、地域に愛着を持った地域住民が媒体となってPRすることで
はじめて、外部の人に伝わるというのである。
後半で取り上げられている13都市・地域の事例紹介は、行政、コンサルタント、NPO代表
などといったように全て著者が異なっており、文体なども統一性が無く自由に書かれているが、
編者が述べているように、結果的に「地域の匂い」や「ストーリー性溢れる」取組みの背景
などが読み手によく伝わるという点は納得がいく。シティプロモーションの理解を深めたい
方にぜひ手に取ってもらいたい1冊である。 |