現在の位置:TOP>まちづくりを学ぼう>図書紹介>アーツ・マネジメント概論 WWW を検索 スペーシアサイト を検索

 

アーツ・マネジメント概論/小林 真理、片山 泰輔 他 著

水曜社/2009年4月発行

 本書は、アートは何かという基礎的なところから、経営戦略や施設のマネジメントなどの実践的な内容まで、アーツマネジメントに関して広く学習できる内容になっている。
  アーツマネジメントとは、「芸術活動の社会的意義を明らかにし、芸術と社会を繋いでいく仕事」である。それは、公演や展示などのノウハウ、それに伴う広報、マーケッティング、あるいは資金獲得のスキルなど、あらゆる職務を使いこなし、芸術文化の振興を図っていくための経営戦略にかかわる仕事でもある。そもそもアートとは、作家自身の内面的な価値観に基づいて製作され、金銭的な欲求や観客へのおもねりへの否定より存在している。こうしたものが現代の経済活動の中で影響力を持って存在し続けるには、高度なマネジメントが必要となる。
  日本では90年代よりこの分野に関心が寄せられるようになる。それは、80年代のバブル期に、全国各地に建てられた文化施設に対し、その施設を使用する事業実施のノウハウが求められるようになったからである。つまり、芸術活動が箱もののための活動として税金の無駄遣いのように言われ始めた結果、芸術の社会的意義を明確にし、社会の文化ニーズを把握し、それに対し積極的に働きかけることを余儀なくされるようになってきたようである。
  今年はあいちトリエンナーレ2010という大規模な国際芸術祭が開催されたが、多額の税金を使用するアートイベントを疑問視する方もいらっしゃるだろう。そもそも芸術は公共であり、広く社会的環境の形成にかかわる社会サービスの1つと見なされなければならないが、現在の社会情勢ではそうした常識すら否定されかねない。これからの時代、真に心の豊かさを獲得していくためには、社会の文化ニーズを十分くみとり、芸術と社会を繋いでいくアーツマネジメントの役割は重要であろう。

(2010.12.20/堀内 研自)