「エリアリノベーション」というタイトルを目にした時、リノベーションして再生したこじんまりとしてはいるが、おしゃれな雑貨屋だとか、カフェだとかが街のいたるところに生まれ、生き生きとした空間を形成している。ぼんやりとだがそんなイメージが頭に浮かんできて、思わず本書を手にすることになった。
「エリアリノベーション」とは、昔から存在する行政主導のマスタープラン型の手法や、市民の自発的な良心に依存した「まちづくり」でもない「新しいエリア形成の手法」である、と本書において説明されている。ある一定のエリアに点在するリノベーションされた各建物は、相互に共鳴し、ネットワークし、面展開を始める。そして最終的にエリア全体の空気を魅力的にダイナミックに変えていく。この新しい手法は、既に限界をむかえつつある「成長ありき」をベースとしてきた従来の都市計画にとってかわる新しい手法となりえるというのである。
本書では、このエリアリノベーションの方法論をまとめあげる上で参考になり、重要な材料になると位置付けた、6つのまち(1.東京都神田・日本橋、2.岡山市問屋町、3.大阪市阿倍野・昭和町、4.尾道市旧市街地、5.長野市善光寺門前、6.北九州市小倉・魚町)において、エリアリノベーションをドライブしてきたキーマンに実施したインタビューを元に、取組みの流れを紹介し、分析を行っているが、どの事例もとても魅力的である。
そしてその分析から得た結果として、本手法を成功させる要因である@全国共通の
「基本構造」と、A地域によって違いの見られる「ローカライズ」、という2つの視点からそれぞれの要素を導き出している。「(誤解を恐れずに言うならば、)エリアリノベーションの動きと既存のコミュニティの関係は薄い。」といった、意外で新鮮と感じる内容もあって面白い。
著者はこのエリアリノベーションという手法で立ち上がった都市の風景は、20世紀のような整ったものではなく、雑多で、ノイズに溢れ、いい意味でいいかげんな風景かもしれない、と言っているが、同時に、これから選択すべき都市の素直な未来をみた、とも書いている。こういったまちがどんなまちなのか気になる方はぜひ本書を手に取ってもらうと良いと思う。
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