東日本大震災から4年が経過し、自分自身も含めて社会は何が変わって、これから何を変えていかなくてはいけないのか改めて考えてみたいと思い、手に取ったのが本著である。本著は、金沢21世紀美術館で開催中(2014年11月1日〜2015年5月10日)の展覧会「3.11以後の建築」に関連し出版された図録であり、ゲストキュレーターである五十嵐氏と山崎氏が東日本大震災以後に、より重要視されることになった建築家の取り組みを7つの傾向に分類し、20以上の取り組みが紹介されている。
「災害後に活動する」、「使い手とつくる」など7つの傾向に分類された取り組みは、建築家ボランティアがまちの人とつくった「逃げ地図」や建築家が使い手とともに考え設計する公共施設など、どれも社会や建築家の役割が変化している中で建築家が挑戦している新しい取り組みであり、現在進行中のプロジェクトも含まれている。また、携わっている建築家自身の言葉で紹介されており、取り組みの経緯だけでなくその思いも十分に感じることができる。中でも復興作業に携わっている小野田泰明氏が述べている「もちろん本展覧会に取り上げられた試みは、良質なものばかりであるが、それでも復興の現実やそこにおける建築人の役割全体を表象しているわけではない」という一文が非常に印象に残った。
東日本大震災について改めて考える機会を与えてくれる一冊であり、展覧会にも足を運んでみたいと思う。 |