「1000%の建築」という言葉に惹かれこの本を手にした。筆者は、ソロモン流にも出演されたことのある今注目されている若手建築家の谷尻誠氏。読み進めると、「1000%の建築」よりも、副題の「僕は勘違いしながら生きてきた」の‘勘違い’の部分が本書の要であり、その部分が非常に興味深かった。
本書の中で筆者は、『「可能か、不可能か」をその時の自分の能力だけで判断するのではなく、まずは挑戦することによって、「可能」の限界点を少しずつ高める。(中略)なにか新しいものや新しい考え方に出会うためには、ほんの少しでもよいので、「思い込み」や「勘違い」という行為が必要です。』と説いている。筆者の言う‘勘違い’を簡単な言葉に置き換えると、「既成概念を壊す」「視点を変える」「ポジティブに捉える」といったところだろうか。本書はその‘勘違い’について、筆者がこれまでに仕事や私生活の中で実践してきたエピソードを含めてわかりやすく解説されている。単に建築家が語る建築の話ではなく、建築・空間を通して様々な価値観や概念をもう一度考え直すきっかけを与えてくれる一冊であった。
この本を最初に手に取ってパラパラとめくった時、白色の用紙の間にところどころある黒や蛍光ピンクの用紙が目に飛び込んできた。中には、白色の用紙に少しトーンの異なる白色の文字で文章がかかれている頁(かろうじて読める程度)があったりと、少し驚く構成であった。読み進めていくと、それらの構成にはきちんと意味があることがわかる。視覚からも楽しめる内容になっており、表現の豊富さにも驚かされる。コンサルの場合も、人に伝わりやすい表現で示すということが多々求められるが、筆者のそういった表現の捉え方も参考になる。 |