人にやさしい街づくり連続講座の発表会は、去る8月22日(土)にウィル愛知にて行われた。今年で4回目となる連続講座の中で、公開で発表を行うのは今回が初めてある。会場には我々受講生を含め、約120人程度の参加があった。
1.我々Dグループの提案−「地域で暮らし続けるために
〜高齢者の住まい方の選択〜」
●レポートの内容
我々のグループは、高齢者の生活を自分や家族の問題としてとらえること、施設ではなく、地域で安心して暮らすことの2点が、講座後のグループ討議の中で毎回話題となっていた。そこで、近年徐々に増えてきたグループホームに端を発し、シニアハウス、コレクティブハウジング、シルバーハウジングといった高齢者の住まい方の事例調査を重ねるとともに、親しい人との共同生活をどのように考えるかというアンケートを市内の街頭や近郊の福祉施設等で行ってきた。
その結果、ある事例では入居者同士で医療や食事などの情報交換が盛んに行われていたり、またある事例では、家族とともに暮らしていた痴呆の方が、家族で面倒が見きれなくなり、施設の紹介でグループホームに入ってから痴呆の程度が軽くなったりと、共同生活を営むことでの成果は出ていた。アンケートでは、40〜50代の人は3分の2が親しい人との共同生活を「考え得る」と答えており、自由回答の中には「共同生活について情報がほしい」というものもあった。最後にまとめとして、今後、地域の福祉を担う組織の中に情報窓口を設置することを提案した。
●質疑応答&感想
たまたま、調べた事例の中にその計画に関わった方がいて、自分達が考えたコンセプトと我々のまとめ方とが違っていることを指摘された。また、アンケートについて、元々どの年齢層をターゲットにして、その結果何を導いたのかという質問に対し、高齢者と高齢者を支える40〜50代の人達をターゲットとし、40〜50代では共同生活を「考え得る」と答えた人が多く、高齢者でも1/3程度は「考え得る」と答えているという回答をした。しかし、前者については我々の調査した結果としてきちんと答えるべきであったがそれができなかったこと、後者については現在高齢者である人たちというより21世紀前半に高齢者となる40〜50代をターゲットとし、この年齢層で親しい人たちとの共同生活を「考え得る」と答えた人が多かったという回答にしておくべきだったことが反省点となった。
2.他のグループの提案
●Aグループ「人と人とのふれあいを大切に(人の垣根をなくそう)」
県の「人にやさしい街づくり」によって身体障害者に対してのフィジカルなバリアフリーは進みつつあるが、精神面のバリアフリーがまだ進んでいないことを問題点とし、心のバリアフリーと施設の複合化(子供と障害者、子供と高齢者)ということに焦点を当て、師勝町立西保育園・師勝町心身障害者共同作業所(師勝町)とこれと比較するために野並保育園・野並デイサービスセンター(天白区)、ゴジカラ村(長久手町)について調査を行った。今回は施設の中のみで調査を行ったが、これを周辺地域との関係を調査してほしいとの意見が出た。
●Bグループ「地域の中のコミュニティ施設−その課題と展望−」
地域住民同士のつながりが希薄になり、コミュニティ崩壊が話題になることがしばしばあるが、地域コミュニティを充実させることは、地域の福祉、防災、治安、子供の成長等からみても大変有効であり、そのためには地域のコミュニティ施設(小学校、子供の家、公民館等)を活用することが必要であると考え、岡崎市東公園周辺を対象に調査を行った。このグループは朝5時に現地集合し、各戸訪問をしてアンケートを行った(サンプル117)。ウォークラリー、ワークショップを提案し、ぜひ実現してほしいとの声が会場からあがる。
●Cグループ「福祉情報サービスのあり方」
高齢者や障害者が地域で住み続けるための条件として情報の伝達という点に着目し、自治体の高齢者・障害者福祉サービスの情報提供の内容・手法・サービスの利用状況を調査した。提案として、調査を重ねた中からグループとして最前と思われるパンフレットを作成した。高齢者の方には理解してもらいやすいパンフレットに仕上がっているとは思うが、視覚障害者など他の障害者の人たちがどうやって情報を得られるのかも調査してほしいとの意見が出た。
●Eグループ「人にやさしいバス交通サービスを目指して」
高齢者や障害者のための巡回・福祉・送迎バスなど、バス交通サービスが各地で展開されているが、利用者側の視点で見た場合、それらのバス交通サービスが適切に機能しているかが疑問である。そこで、日進市で運行中の巡回バスを題材に調査を行った。会場からは、定時性が確保できない、タクシーの方が家のすぐ近くに来てくれるので巡回バスそのものがいらないという話も出た。
3.人にやさしい街づくり連続講座を受講しての感想
この連続講座は6月のはじめから3ヶ月間、ほぼ毎週土曜日に行われ、受講生は建築士、ホームヘルパー、障害者の方、行政職員など、年齢構成も様々で、内容も講義、車いす体験、まちづくりゲームと盛りだくさんであった。そして、この連続講座のメインはなんといっても、グループスタディである。1ヶ月以上かけて業種も年齢もバラエティに富んだ人達が自分たちでテーマを設定し、仕事の合間を縫って、夏の暑い日の中、調査を重ねて上記のようにレポートにまとめるという作業は、まさにまちの計画づくりの疑似体験だった。都市計画コンサルタントとしてグループに入った以上、未熟な私が調査の進め方やとりまとめの進行をしなければならず、違った価値観のぶつかり合うなか大変だったが、まちづくりに意欲を持つ人たちがたくさんいることを実感し、様々なことを教えられた3ヶ月でもあった。ただ少し残念なことは、議論をしたのはグループのメンバーに限られていたため、他のグループのメンバーとの交流がなく、来年以降の連続講座ではその辺も考慮した運営がされることを期待する。
これからのまちづくりには、様々な分野との連携や、世代を越えたネットワークづくりは不可欠だと実感した。その意味でも、一人でも多くの方がこの講座を受講し、一人でも多くのネットワークが生まれることを期待する。 |