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出雲・松江のバリアフリー事情

  今年は、60年ぶりに大遷宮が行われる出雲大社と、20年ぶりに式年遷宮が行われる伊勢神宮が同年に行われたこともあり、どちらもマスコミや観光ツアーでも盛んに取り上げられています。この60年ぶりということにあやかり、10月の連休に出雲や松江などを訪れる機会がありました。
 まず、出雲大社の大遷宮を簡単に説明すると、現在の御本殿は江戸中期の1744年に造営され、1809年、1881年、1953年の修造を経て、今回が4回目となります。伊勢神宮の式年遷宮が20年に1度新しく社殿を造り替えるのに対し、出雲大社の大遷宮は国宝に指定されている御本殿の修造をして建物が使われ続けます。2008年4月に御祭神が仮殿へ移られ、約5年をかけて御本殿をはじめ瑞垣内の社殿が修造され、今年の5月に5年ぶりに仮本殿から御本殿に御祭神が遷座されました。なお、「平成の大遷宮」の事業は境内外の御社の修造が引き続き進められ、2016年3月まで行われるとのことです。御祭神は、ダイコク様で知られる大国主大神(オオクニヌシノオオカミ)。多くの姫神との間に子を設けたことなどから「縁むすび」の神とも言われています。
 さて、出雲・松江のバリアフリー情報について概略を説明していくと、1つ目は公共交通。松江市から出雲へ行くのにはJRもありますが、松江しんじ湖温泉駅から出雲大社駅前まで一畑電車で行くのがおすすめです。JRの駅は出雲大社から随分離れたところにありますが、一畑電車の出雲大社前駅は一の鳥居と二の鳥居の間の門前町にあり、こちらの方が境内に近くなります。また、一畑電車の路線は地上を走り、どちらの駅とも終着駅であるためホームと改札口の経路に高低差が少なく、バリアフリーでアクセスできます。
 2つ目は歴史ある出雲大社。出雲大社前駅から参道までは、緩やかな上り坂となり、二の鳥居から出雲大社の境内に入ります。出雲大社の境内は昔からの社殿の造り、砂利敷きの境内、一部の急な坂などはありますが、参道の横に迂回路が設けられるなど、車いすやベビーカーでアクセスすることができます。また、自動車の場合は出雲大社の隣の県立古代出雲歴史博物館に身障者用駐車場があり、駅からよりもさらに近道となります。
 3つ目は松江市内。今回の訪問では、名所である松江城(天守は国重要文化財)、堀川遊覧船など体験する時間は少なかったものの、昔ながら雰囲気を壊さず、誰もがアクセスできるように努力がされていると各所で感じられました。
 最後、4つ目に人の対応。初日に松江/山陰バリアフリーツアーセンターの事務局でもあるNPO法人プロジェクトゆうあいを訪問し、現地の細かな情報を詳しく知ることができました。今後ますます少子高齢社会に向かう中、このようにきめ細かく情報を知ることができる窓口が必要ですが、東海地方でいえば高山と伊勢を除くと取り組みは不十分です。おまけでいうと、行く先々で地元の方々の多くが親切だったのは県民性かもしれません。
  島根県は、県全体でも人口が70万人強と、政令指定都市並みの人口しかありません。財政的にも厳しいでしょうが、それでも歴史的な施設ではバリアフリーに配慮され、人的な対応も行われています。今回、出雲・松江を訪問し、このことを改めて知る機会となりました。

てくてく山陰「松江/山陰バリアフリーツアーセンター」のページ
http://tekuteku-sanin.com/

一畑電車
今年9月にお目見えした一畑電車の「ご縁電車しまねっこ号」
出雲大社駅前
地上を走る一畑電車の終点、出雲大社前駅。列車から改札を抜けて門前町までバリアフリー

参道
二の鳥居あたりは境内の内外を分ける堤のような地形になっていて坂の勾配はきつい

参道
本殿に向かう参道は砂利道
迂回路
迂回路があるため、ここを利用する車いすの方、ベビーカーを押す方も多い
拝殿
拝殿は緩やかな幅広のスロープが設置されている
本殿
出雲大社本殿の参拝、中の神様は浜の方(西側)を向いているので、本殿の正面(南側)ではなく西側から拝むのが正解
島根県立古代出雲歴史博物館島根県立古代出雲歴史博物館
堀川遊覧
この期間は夜にも堀川遊覧も行われていた

松江城の天守の玄関まで車いすでの移動は困難だが、近くまでは行ける
(2013.11.11/浅野健)