今年の夏、久しぶりに欧米にオープンカフェをはじめとする公共空間の活用についての調査研究に出かけることができました。北米西海岸のシアトル・ポートランド・サンフランシスコの3都市、欧州のコペンハーゲン、パリ、ミラノの3都市の合計6都市です。米国と欧州の違い、緯度の違いによる活用方法に変化があるのか、という視点で15年前に調査を実施し、今年再び同じ都市を定点観測的に調査しました。その結果については、改めてご報告させていただきます。精査前の印象を言うならば、次の通りです。
- 全般的に公共空間の規制緩和が進んでおり、オープンカフェを例にするなら、その設置個所は増え、シアトルやサンフランシスコのように簡便なカフェ(テーブル&チェア)の設置を認め、誰でもが座れる場を提供、あるいはコペンハーゲンのように、道路の幅広い中央分離帯(交通量の少ない行き止まり車道が前提)でのオープンカフェ(サービスは歩道側の店舗より車道を渡って提供)が提供され、さらにはパリのように従来は店舗の幅しかオープンカフェが設置(シャンゼリゼ大通の飛び地のカフェ)できなかったものが、隣接の了解を得られるなら、その幅の2倍まで許容されている。
- 道路空間の再配分がすすんでおり、欧州諸都市では自転車道や(特にコペンハーゲン)、トランジットモール(特にポートランド)が確保されている。都心部での歩道の拡幅も着実にすすんでおり、コペンハーゲンやミラノで顕著であった。その空間の多くにはオープンカフェが設置されている。さらには、すでに日本でも紹介されているが、サンフランシスコではパークレットという、有料駐車空間を前面にある店舗等が有料で借りて、不特定の利用を前提とした休憩施設や駐輪場として使用している。同じサンフランシスコでは、ランチタイムには車道を門扉で閉鎖して、オープンカフェとして利用できる箇所が増えてきている。
- ただし、規制緩和だけでなく、規制強化の側面もあり、一定の歩行者通行帯の幅を確保しておけば、S字カーブでもこれまではよかったものの、直線で一定幅を確保することが義務付けられているコペンハーゲンやシアトルがある。なお、以前2か所あった囲い込みテラス(歩道上に設置された囲い込まれた屋内型のカフェテラス)がなくなっていた。これは15年前も景観を固定するので好ましくないとの評価があったので、建築物の工事等をキッカケに撤去されたと考えられる。
- 15年前にパリのオープンテラスが10万ヶ所あり、囲い込みテラスは2,500ヶ所と紹介し、そのデータが日本で流布しているが、今回どれだけ増加しているのを確認すると、オープンテラスは11,300ヶ所、囲い込みテラスは3,500ヶ所との情報を得た。囲い込みテラスはここ15年間に着実に増えている。オープンテラスが10万ヶ所から11,300か所と激減しているが、15年前のデータが一桁間違っていたようで、1万ヶ所であることが明らかになった。なぜなら6万店の飲食店で10万ヶ所も設置できないであろうことは明白であるからだ。とはいうものの、パリの設置個所は圧倒的に多い。ミラノと比較すると、いわゆるオープンテラスが1,712ヶ所、周囲をガラス等で囲い込んで天井は空いているテラスが597ヶ所、囲い込みテラス(デルホス)が40ヶ所、キオスクが177ヶ所であった。
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