木造都市研究会「木愛の会」で予定していたツアーが人数が集まらず中止になってしまったが、折角の機会を今後につなげるため、世話人3人でベトナムを訪問した。
都合で私は4日間(実質は2日間)の訪問となったが、平均年齢27.4歳というベトナム(日本は44.6歳、2010年) の活気を感じることができた。大きく成長した街路樹、道路を席巻するオートバイ、その間を信号もないのにスイスイと横断していく人々、汚れた川の問題などまちとしても興味深く感じたが、ここではベトナムの環境建築の一旦を紹介したい。
■U-cafe
ベトナム訪問のきっかけとなったcafe。このプロジェクトに関わられた森林文化アカデミーの廣田先生にお話を伺ったのが発端。日本の放置自転車をベトナムへ送り続けるという活動を通じてベトナムとの関係を築いてこられた日本人オーナーの思いがつまった建築で、情報拠点としてのコミュニティカフェとなるとともに、ここで若者に接客技術を学んでもらい、一流ホテルで働くことのできるような人材育成もめざしているという。
環境建築として様々な工夫がされているが、話を伺った中で一番驚いたのが、ベトナムでは汚水の浄化という概念がなく、汚水をそのまま川に流しているということ。U-cafeでは日本の技術を持ちこみ、雨水利用とバイオフィルターを使った浄化を行っている。U-cafeは大きな川に面しているが、その川の水は汚く、ホイアンの世界遺産のまちを流れる川の臭いには閉口した。U-cafeでの新しい試みが注目されているのが頷ける。
詳しいことを知りたい方はプロジェクトを紹介した下記ページを参照されたい。
熱帯歴史都市ので環境建築(Hpi An U-Cafe)の取組み
■竹の建築
上海万博のベトナム館を設計するなど若手建築家として注目を集めるVo Trong Nghia氏の竹の建築。ツアーではハノイ郊外にあるBambooWing(2010年竣工)を訪問する予定であったが、今回はそちらには行けずホーチミン郊外の3作品を見学した。これらは初期のプロトタイプであり、竹を建築資材としてうまく活用し、風、水、植物に囲まれた
快適で力強い空間を生み出している。
1131cafeでは、竹は天井等に使われている程度であったが、風や水の活かし方はその後の建築に共通しており、竣工当時はかなり話題になったのではと思われる。その翌年に竣工した
wNw cafeでは竹が大胆に用いられ、デザインにも活かされている。自然の竹にも囲まれ、多くの若者で賑わっていた。それに隣接して2年後に竣工したBamboo Domeでは、まさに竹の建築といえるもので、その内部空間の美しさに魅了された。
Vo Trong Nghia氏は名工大・東大大学院を卒業されており、日本人の丹羽氏とともに建築事務所を作られている。日本で木造建築について学んだことがベトナムでの自然素材を見直し活かす建築に活かされているという。若い建築家が活躍するベトナム建築に注目していきたい。
丹羽氏のブログ「ベトナム・建築家日記」
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