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大阪府の登録文化財「阿倍野長屋・寺西家住宅」「畑田家住宅」を視察
愛知登文会(愛知県登録文化財建造物所有者の会)の保存・活用講座で、大阪府登録文化財所有者の会(以下、大阪登文会)の活動をお聞きするとともに、登録文化財である「阿倍野長屋・寺西家住宅」「畑田家住宅」を視察した。
大阪府は47都道府県の中で全国一の登録文化財建造物数を誇っており、大阪登文会も愛知登文会より6年早い平成17年に全国で最初に設立されている。活動内容としては、登録文化財建造物を活用して、フォーラムや水墨画展、お茶会、小学生を対象とした見学会や生活体験学習を開催するなど、毎年様々な企画が実施されている。これらの活動の主財源は、会費のほか、登録文化財を紹介する冊子を会で作成しその冊子販売から収入を得ていたり、国等の助成金を申請するなど工夫がされていた。また、活動の担い手でもある会員の数も、設立時の52名から現在83名(平成21年7月時点)に増えている。一方で、中心となって動く人が固定されつつあるといった課題も聞かれた。
はじめに視察した「阿倍野長屋・寺西家住宅」の長屋は、昭和7年に建築された2階建ての4軒長屋である。老朽化のため一度はマンション建設が計画されたが、文化財として登録する話が持ち上がり、平成15年に長屋としては全国で初めて登録された。驚いたことに、長屋改修とマンション建設の収益を比較したところ長屋改修の方が歩がよかったとのこと。マンション建設は建設費や建物の固定資産税がかさむ一方、阿倍野長屋の場合、長屋4軒をテナント貸しし内装費はテナント側が持っているので、阿倍野長屋は特別なケースかもしれないが、非常に興味深いお話であった。
次に視察した「畑田家住宅」は、明治期の旧家の趣きを残す庄屋屋敷で、主屋、蔵、応接室、塀など計11件が登録文化財となっている。こちらの当主は大阪登文会の会長で、大学教授でもある。学習を通じた活動、例えば「畑田塾」という小学生から高校生までを対象とする学習会や、一般公開と併せて音楽や美術や健康といった様々なテーマによるフォーラムなどを当主自らが企画や実施をされている。これらの活動を支援する形で、登録直後に「畑田家住宅活用保存会」も結成されており、驚くことに会員数は約10年間で300名を超えている。 登録文化財を後世に残していくためには、登録だけでなく多くの方に知ってもらい見てもらい、さらに活用してもらうことが重要だと感じる。愛知県においても、活用の方策を見いだしながら、今回視察した2件のように人々に活用される文化財が増えることを期待したい。
阿倍野長屋 現在は3軒の飲食店が入っている
畑田家住宅 3段重なるめずらしい屋根
(2011.12.19/喜田祥子)