岡山県倉敷市に古い団地を介護施設として再生し、新たな高齢者施設のモデルを展開する社会福祉法人があると聞き、視察させていただくこととなった。
施設を運営する社会福祉法人 生き活き館は県内で特別養護老人ホームやグループホームをはじめ、さまざまな高齢者施設を展開している。
今回見学させていただいた「ケアポート生き活き館倉敷」は、もともと1960年代に建てられた雇用促進住宅で、4棟120戸の古い団地である。2006年に管理・運営を行う雇用・能力開発機構から入居者もそのままで譲り受け、その内の1棟、4号棟を小規模多機能型居宅介護施設へと改修した。4号棟は片廊下型と言われる屋外廊下に対して各住戸が並ぶプランであるため、廊下に面してどこか1箇所にエレベーターを設置すれば、高齢者でも問題なく使用できる。1階は10戸の住戸がありその内2戸を繋げデイルーム、入浴施設、事務所などへ改修し、その他の住戸はショートステイの宿泊室へと転用している。定員は20名、宿泊は8名まで対応できる。小規模多機能型居介護施設の定員は25名まで可能であるが、デイルームの広さが足りず20名までとなったそうだ。小規模多機能型居介護施設の運営は、いかに定員いっぱいの利用者を安定的に確保できるかがポイントで、住宅事業と組み合わせることが理想的である。例えば1階の介護施設を利用する方が上階の住宅に住んでもらうことで、利便性の向上と安定した利用者確保を両立できる。「ケアポート生き活き館倉敷」では、小規模多機能以外の住宅を第二種社会福祉事業として「サンパレス倉敷」という賃貸住宅を運営している。この住宅は月約3万程度で入居できるため、小規模多機能型居宅介護利用料と、毎日の食事サービスを合わせても月10万程度ですむ。たまに1泊1,500円の宿泊サービスを利用しても、月々12〜13万あれば介護付きの暮らしが可能となる。
雇用・能力開発機構は、今後約15年間で雇用促進住宅の譲渡・廃止の方針を打ち出しており、また、全国の公営やUR等の古い団地についても同じような動きが加速するであろう。倉敷の例は、そうした古い団地の再利用の事例として注目すべき施設である。 |