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ソウル集合住宅視察(2009.9.17〜20) 

  都市住宅学会の先生方と一緒にソウルを訪問する機会に恵まれた。案内していただいたのは椙山女学園大学の村上先生と東大大学院で同窓だった趙美蘭さん。大韓住宅公社でリモデリングのパイロットプロジェクトを手掛けられており、ソウルの集合住宅を熟知されている。2日間という短い期間にもかかわらず、ソウルの特徴的な興味深い集合住宅を多数案内いただいた。
 韓国では集合住宅の占める割合が高く、それも10階建を超える高層住宅が多い。移動中にも多数の高層住宅がみられたが、グーグルアースの航空写真を確認するとその規模に圧倒させられる。ソウル郊外に住む趙さんの友人のマンション屋上からまちを眺めさせてもらったが、郊外にも高層住宅が面的に広がっていた。
 韓国では建替え抑制の政策がとられ、住宅再生への期待が高まり、そのパイロットプロジェクトとして実施されたのが麻布勇剛アパートである。1971年竣工の老朽化した集合住宅9棟のうちの2棟で実施(2003年7月完了)。漢江に沿った細長い敷地であり、駐車場のスペースは全くない。デザイン的にはすぐれているが、立地が悪く、「本来再生すべきでなかったものを対象にした」と趙さんは語る。残りの7棟は除却して後を公園にすることが決まり移転が進んでいた。
 もう1つの再生事例である宮殿アパートは、バルコニー増築、室内の増築・再構成を行っており、外観もその名にふさわしく豪華である(2006年12月完成)。何よりも驚くのは地下駐車場を増設し、駐車台数を2倍以上にしていることである。建設会社がその後の再生市場への期待から工事費を負担したとのことだが、期待したほどの広がりはないという。
 古い団地では建替えに対する期待が高まっている。再生計画の進む大規模団地も見学した。江南の高級住宅地にある銀馬アパートは建替えへの期待から住宅価格が上昇しているという。
 視察では主に大規模集合集宅を見学したが、ホテルの近辺には4・5階建の集合住宅が集積しており、朝の散歩がてらまちを歩いてみた。レンガ色の外壁が町並みを形成しており、非常に落ち着いた感じを受ける。高層住宅とのスケール感の違いが歴然としており、むしろ、こちらの住環境の方が優れているのではとも思うが、住宅価格は圧倒的に高層住宅の方が高いという。確かに駐車スペースがないことは問題だが、ソウルでは地下鉄網も充実しており、車がなくても十分に生活できそうに思うのだが・・・。

 夕食帰りにバスが何台も待っている風景に出会った。塾帰りの子ども待つバスだということに驚いたのだが、その後、九鬼太郎著「“超”格差社会・韓国〜あの国で今、何が起きているのか〜」という著書で、夜中の0時、1時まで塾で勉強するのは当然という記述を読み唖然とした。有名高校への進学競争の過熱に対し、高校入試を抽選にするという「平等教育」の反動が塾の大流行を生み、塾周辺の住宅価格も上昇させたという。
 「走りながら軌道修正する国」と九鬼氏は指摘する。清渓川の再生にしても劇的な変化を短期間の間に実現してしまう。韓国がどんな国に変わってしまうのか。これまであまり関心を持っていなかったのだが、日本の未来を考える上でも注目していきたいと思う。

江南から漢江をはさんで江北地区をみる。高層ビルが林立する姿は圧巻。

江南地区良才川沿いの遊歩道を歩く
両側に高層住宅


ソウルの富の象徴タワーパレス
良才川沿いの遊歩道からの眺め


オリンピック公園の向こうに選手村アパート
リフォーム物件を見学した
城南市ブンダン地区の超高層住宅
ソウル郊外にも超高層住宅が一杯


銀馬(ウンマ)アパート
車を移動させるため、前に止められた車を手で押している光景にも出くわした。


南山の北斜面にある住宅
南山の景観を取り戻すため、取り壊しが決定している


麻布(マーポー)勇剛(ヨンガン)アパート
リモデリングのパイロットプロジェクト



宮殿アパート
リモデリングで地下駐車場を整備

ホテルの部屋からみた江南地区の住宅
4・5階建のものが多い


ホテル近辺の集合住宅

ホテル近辺の集合住宅

ホテル周辺の集合住宅
近年のものは1階が駐車場になっている

ホテル周辺の集合住宅
豊かなコモンスペースを持つものもあった


ソウルの町並み保存地区・北村

多くの人々で賑わう仁寺洞(インサドン)

高速道路と撤去してよみがえった清渓川
上流の
清渓広場あたりは人工的


見事なオープンスペース


2005年10月の完成直後と比べ
緑の成長が著しい
道路からかなり下にある
川辺に降りられる箇所が限定されているのが残念

  (2009.10.12/石田富男)