「金沢アートプラットホーム」とは、現在金沢市で開催している芸術祭である。さまざまな人がまちなかを舞台にアートを通して出会い、出来事が起き、対話が生まれる様を、さまざまな電車が発着する駅のプラットホームにたとえたネーミングである。主催は金沢21世紀美術館で、10月4日から12月7日の期間中に19人の主要アーティストの作品展示の他、33の共参イベントが行われる。展示空間となるのは、メインの金沢21世紀美術館の他、商店街の路上、公衆便所、空きビル、大学のエントランスホール、路面電車、神社、町屋、一軒家、公園、などバラエティーに富んでいる。中でも兼六園から200mほどにある古い印刷会社のビルを借りて開催している「kapo(金沢アートポート)」の試みは新しい。「kapo」の代表を務める石崎さんにお話を伺うことができた。そこでは、ビルの1Fにアートグッズを売るショップとカフェ、2Fにギャラリーを設置している。ただし、このギャラリーに展示している作品は、借りることができる。値段は作家が自由に設定しており、1日300円というものから、1週間1万とさまざまである。出品している作家は特に審査があるわけではないそうだ。レンタルの状況はというとまだまだで、企業などへの売り込みを検討中とのことである。今後の展開を伺ったところ、「kapo」を拠点にこの界隈に少しずつアートスペースを展開していきたいとのことである。ただし、運営資金と集客力といった問題もある。家賃は金沢21世紀美術館から補助が出ているが、運営スタッフは石崎さんを含めすべてボランティアで、アートへの熱意で支えられていると言ってよい。また、どんなイベントでも、客さんを引っ張ってくるというとこは、そう簡単ではない。
近年、アートイベントは花盛りであるが、集客力のある作家は一部の世界レベルの方々に限られるようで、アートの裾野を広げるには根本的な問題への取り組みも必要であろう。例えば、家やマンションを設計するときは必ずアートを飾れる壁を用意するといったことである。ただし、そういった壁の多くはテレビに占領されてしまうので、狭い日本の住宅で十分な配慮が必要である。
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