立川市のJR立川駅周辺は、大須中華街に先立ちオープンした立川中華街のある駅前再開発ビル・グランデュオをはじめ、伊勢丹・高島屋・ルミネなどの商業施設や行政、公益、業務等の諸機能が集積し、多摩ニュータウンとモノレールで結ばれているとはいえ、人口約174千人とは思えない活気がある。
その立川駅から北北東に3kmほど行くと、緑豊かな住宅地の中に『若葉ケヤキモール』がある。玉川高島屋などのショッピングセンター(SC)を運営する東神開発鰍ェ、全国にもまだ少ない新たな業態・ライフスタイルセンター(LSC)として3月に開業したSCである。LSCは、90年代半ばにアメリカで生まれたSCで、上質なライフスタイルを提案できる生活に必要な業種・業態(食品スーパー、ファッション雑貨、レストラン、書籍・CD、旅行会社など)を集め、小商圏を対象にしたコミュニティ機能にこだわったSCである。
親会社の高島屋の配送センター(敷地面積約10,000u)に建てられた鉄骨2階建ての店舗面積約7,000u程(延べ床面積約13,000u)の小型のSCである。東新開発の報道資料によれば、『半径2kmの小商圏(人口約9万人)を対象とし、豊富な生活経験を有する団塊世代=「新しい大人」にも対応可能なテナントミックスで、他のロードサイド型、GMS等の商業施設と差別化を図る』としている。木質系のデザインを基調に、ケヤキなどの樹木をふんだんに取り入れ、食品スーパーを核にドラッグストアや書店、家具・インテリア雑貨店、ベジタブルレストランなど23店舗の個店と駐車場(300台)から構成さ、落ち着きのある快適な店舗空間を提供している。訪れたのは平日の1時過ぎであったが、30歳以上と思われる主婦層と高齢者を中心に多くの客が買い物や飲食に来店していた。
LSCは、見るところかつて主に地方都市の中心市街地に立地し、郊外の大型店と同業態であるがゆえに、競合に敗れ、衰退していった小規模なSCを、上質を切り口に、自然環境や洗練されたデザインを取り入れ、こだわりを持った高級感のある店舗群を構成し、地域密着型の新たな業態として展開しようとする試みと受け止められる。LSCの先駆けである若葉ケヤキモールについては郊外店舗にない「こだわりの店舗群」という点ではまだ課題があるように思われるが、LSCは、まちづくり三法の改正による店舗規模規制の中で、SCディベロッパーやテナントから、成長が期待できるSCと言われている。郊外大型店との差別化をはかり、競合を回避しようとするLSCの基本的戦略は、今後のまちづくりにとっても一つの方向性を示していると思われる。
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