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ちひろ美術館・東京

 「ちひろ美術館・東京」は西部新宿線上井草駅から徒歩7〜8分、建て込んだ住宅地の一画にある小さな美術館である。この場所はいわさきちひろが22年間絵本を描き続けた自宅跡であり、ちひろが他界した後、1977年に「いわさきちひろ絵本美術館」が建てられた。さほど立地もよいとは言えない場所にありながら、作家の人気は高く、増築を繰り返し、最終的には3棟の美術館へと成長したそうだ。その美術館は開館25周年を記念して新しく建替えられ「ちひろ美術館・東京」として生まれ変わった。建替えに当たっては、これまで活動を続けてきた方々の思いや、積み重ねてきた時間や記憶を継承することに注意が注がれた。例えば建物は以前のように3棟構成とし、建物のボリュームを押さえることで見事に周囲の住宅に溶け込むような景色を作っている。建物の間に生まれる隙間は、小さな中庭として敷地に散りばめられていて、緑豊かでほっとさせてくれる空間を生み出している。また、エントランスにある大きな3本の欅はそのまま残されたもので、美術館の関係者からは「新美術館は全く新しい建物になるが、変わらず存在する欅が旧ちひろ美術館と時をつなぐ象徴のように感じられて嬉しい。」との言葉も聞かれる。


 いわさきちひろは現在でも人気が高く、長野の安雲野にも1997年「安雲野ちひろ美術館」がオープンしている。多い時には1日4,000人もの入場者があったといい、2001年に増築されている。こちらの美術館もこの夏訪れようと思っているが、母親として自宅で子育てをしながら、子供の表情やしぐさを観察し絵本にしてきたちひろの作品には、「ちひろ美術館・東京」のようなまちの小さな美術館がぴったりである。 

 

 (2004.8.5/堀内 研自