知人に誘われて、中山道木曽路の藪原宿から贄川宿までを歩いた。JR藪原駅から歩き始めて鳥居峠を越え、奈良井宿に着いて1泊。翌日JR贄川駅まで歩くという行程である。これまであまり街道を歩くという経験をしたことがなかったので、街道と町並みを考えるよい機会となった。
JR藪原駅から「お六櫛」で有名な藪原宿の町並みを抜け、鳥居峠へと続く山道に入っていく。峠は日本海と太平洋の分水嶺となっており、戦国時代には武田氏と木曽氏の戦場となった場所でもある。沿道には様々な花や植物が見られ、現在はハイキングを楽しむ人も多い。それほど険しい道ではないが、3時間半あまりの山道は運動不足の体にはきつく、途中で膝が痛くなってきた。歩き疲れてくたくたになったところで奈良井宿の町並みが見えてきた時の安堵感。この気持ちを昔の旅人も感じたに違いないと確信する。
全体に黒っぽく、ゆるやかにカーブしながら連なる奈良井の町並みは、雰囲気が妻籠に似ている。当たり前のことだが、それぞれの宿場町は木曽路という1本の道でつながっているため、自然と近くの宿と姿が似てくるのであろう。奈良井宿は、中山道随一の難所と言われた鳥居峠を控えていたため宿をとる旅人が多く、「奈良井千軒」と呼ばれる繁盛ぶりだったという。現在は約1kmにわたり230軒余の町家が軒を連ねており、昭和53年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。2階を1階よりも少しせりだした出梁(だしばり)造り、長く伸びた軒の庇をおさえる猿頭(さるがしら)と呼ばれる桟木などが町並みを特徴づけている。こういった建物外観の特徴は、近辺の宿と共通しているようである。
奈良井宿の元下問屋だったという「伊勢屋」に1泊し、翌日は豪雨の中、贄川駅まで歩き、帰路に着いた。実際に街道を歩いてみると、その道をこれまで歩いた人の気持ちや、沿道の町並みの役割や性格がよくわかる。こらからは、町並みを見るときは、そこにどんな道がつながっているのかも合わせて見るようにしようと思う。
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藪原宿のお六櫛問屋
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鳥居峠の頂上にある御嶽神社を祭る遥拝所
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奈良井宿
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庇の上の「猿頭」
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平沢
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