2001年1月、ここ数年建築界の話題をさらっていた「せんだいメディアテーク(以下SMT)」が出来上がった。10月の末にこの建物を訪れたが、その時、私が昨年お手伝いをさせていただいた市民参加による駅前施設検討のワークショップのことを思い出した。そのワークショップでの議論の大半は、「市民は駅前にどんな目的でやってくるのか。」「その目的を果たすにはどんな機能が必要か。」「その機能を満たす施設はどんなものなのか。」というものだった。公共施設として、市民の要望を聞き、その要望にあわせた施設計画を行うことは理にかなったことと思える。しかし、ここに市民参加という言葉の落とし穴がある。市民参加の会合とは言え、出席できる人は数十人が限度であり、会議で語られることは、多くの市民はこういったものを求めているだろうという想定である。こうした状況の中から限定された目的や機能は、はたして市民が求めたものなのか。
こうした疑問に対し、答えの片鱗を見せてくれたのがSMTである。SMTには施設がオープンした現在でも具体的な目的や機能は明確になっていない。しかし、それが存在できるのは市民が「自発的で知的な好奇心」を持っていることにある。人間が自然に抱く知的好奇心に対し、それをできるだけ自由に満たすためにはSMTはどんなサポートができるのか。これがこの施設のメインテーマとなっている。これだけの巨大な施設であえて目的や機能を流動的とし、利用者自らがその使い方を見出していける仕掛けを造るということは大変な困難を要したであろう。
この建物は、これからの公共施設はどうあるべきかという問題に真剣に取り組み、それを実際に形にした先駆的な事例であり、今後、多くのものづくり、ことづくりに対して、大きな影響を与える力を持っている。
最後にSMTを見た感想を一言でいうと「仙台市民がうらやましい」ということであった。
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