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身延駅前しょうにん通り商店街の視察

 日蓮宗総本山、身延山久遠寺のある山梨県身延町(人口約8.3千人)の駅前商店街を視察した。町施行の沿道区画整理型街路事業と商業協同組合の高度化事業との同時施行により、都市計画道路(幅員12〜20.5m)の整備とあわせ商店街の家並み整備と共同施設整備が行われ、平成9年3月末に事業が完了している。小規模な町での商店街整備として関係者の話題となった事業であり、また、永六輔著「商人」(岩波新書)のなかでも門前町の活性化例として紹介されている。

 近年、門前町や城下町などで統一された和風のデザインにより町並みを新たに整備する事例が増えている。しかし、デザイン的な問題や事業としてまったく新しい景観に作り変えてしまうがゆえに町並みに趣がない、また、あまりにも統一されすぎて映画のセットのようになるなど、何かしら違和感を抱くのは自分だけではないだろう。

 「しょうにん通り」も門前として「建築申し合わせ」に基づき「和風の家並」を整備している。申し合わせは10項目であるが,主要な点は
 (1)3階以下にする、
 (2)色を「白・灰・黒」及び「木材の自然色」の範囲とする、
 (3)1階に庇をつける、
 (4)各戸に家紋をつける、
 (5)壁の一部に「なまこ壁」を用いるというものである。

 デザイン的な評価は難しい面もある、また、「かご、人力車」による来街者サービや東京のデザイン科の学生との交流事業など商店街のソフト事業も展開されているが、「まち」の規模からすれば道路幅員が広すぎ、商店街経営からみて問題も多いと思われる。

 しかし、人口わずか8.3千人の地方都市の商店街である。商・住混在の地域で、住宅を含め、全権利者が同意し、過去の商店街(写真で見る限りどこでもある商店街)とは全く異なる新たな町なみを創造したのである。そして、戸々の家・店舗がそれぞれ申し合わせ事項を画一的に守るのではなく、工夫して取り入れている。このため、個々の建物は変化がありながらも、まち全体としては何かしら統一感のある景観を作り上げている。

 個の自由の結集としての町なみの調和を図ろうとする試みであったのかは定かではないが、そうした雰囲気を少し感じさせる町なみである。店舗と住宅が協調して実現した町なみは、周囲の緑や川の自然環境の豊かさにも恵まれ、時間の経過とともに身延の町に溶け込んでいくものと思われる。

 (2000.10.16/浅野泰樹)