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滋賀県長浜市「黒壁ガラススクエア」視察


自主視察(1998.2.6.金)

 ●視察の動機

 本年1月4日の日本経済新聞に、「魅力的な街はどこ?」(日経産業消費研・都市専門家調査)の第1位に滋賀県長浜市の黒壁ガラススクエア(以下、黒壁)が選ばれていた。黒壁を経営している轄封ヌには瀬戸市から派遣職員がひとり常駐しており、記事を見た瀬戸市企画課職員とこの機会にぜひ、と意見が一致し、訪問することになった。

●轄封ヌの概要

 後述する。また昨年11月に当社所員が別調査の一環で、轄封ヌの専務でいらっしゃる笹原氏にヒアリングを行っていることから、近年の黒壁の動向も含めて記述し、ここでは視察概要を中心に報告する。

●視察内容

 黒壁を訪れたのは今回が3回目である。以前来たときは休日であったため、観光客でごった返す中、数ある店舗や施設のいくつかを見るに留まった。

 しかし今回は、平日ということもあり人もまばらで、しかも瀬戸市からの派遣職員の唐沢さん(20代半ば女性)に案内してもらったことから、まち全体をゆっくりと歩くことができた。

 改めて黒壁のまちを視察して、大きく3つのことを感じた。訪ねた店舗、施設の紹介を含めながら、それらを以下に記す。

【まちが成長している】

 南北軸である北国街道と東西軸である大手門通り周辺がメインとなるが、大手門通りより一本北の通りである祝町通りへも広がっている。黒壁は現在24号館まであるが、祝町通りに13、20〜23号館が立地し、(さらに25号館が建設中)これまでの普通の商店街が様相を変えつつある。この通りを抜けると大通寺があり、新しい観光ルートになりつつある。

 その他黒壁とは直接関係ないが、2年前の1996(H8)年4月にオープンした「長濱浪漫ビール」の建物は蔵を改造してできた地ビールのお店である。手前に流れる川とともに長浜の面影を感じさせる。これも黒壁の波及効果?ビールの味もまずますであった。

【訪問客に対するホスピタリティがある】

 「黒壁ガラス館(1号館)」から少し北にいったところにある「黒壁ガラス鑑賞館(10号館)」は、古代から現代までのヨーロッパのガラス芸術作品を展示している。建物の中には、轄封ヌのアルバイトスタッフが常駐し、親切に対応してくれる。このアルバイトスタッフの多くは地元の奥様方で、単なるお金稼ぎではなく、長浜、黒壁のことをもっと知ってもらおうというどちらかというと観光ボランティア的な感じである。こちらがゆっくりみたいのに話しかけてくるお節介な人とは違い、妙に心遣いができているスタッフの方ばかりで驚いた。

 これはこの鑑賞館だけでなく、和菓子の店である「叶匠寿庵(20号館)」でもそうであり、お茶のサービスも含め、とてもサービスの心使いが感じられた。

【魅力ある休憩スポットが多い】

 黒壁全24館中、なんと9館が飲食店である。一日散策して気が付いたら4ヶ所の飲食店で休憩し、さらに公園でも腰をおろしていた。

 飲食店の個性もさることながら、その休んだ野外ギャラリー付き公園は、建物の奥まったスペースの有効活用をしているようで、隣接する喫茶店のコーヒーをここで飲んだりもできるようだ。また喫茶店のトイレも自由に貸してくれる心使いもにくい。

●お話を伺って...

 唐沢さんが瀬戸市から轄封ヌに出向して間もなく1年。彼女がこちらに来て感じたことは、「まち自体に動きがある」ということだそうだ。「大勢の観光客が訪れるということもあるが、各商店に活気がある。一店一店が洒落ているわけではないが、来客者に対して売る努力をしていることが各個店の魅力づくりにつながっている」とおっしゃていた。これは瀬戸市中心市街地にある開店休業中のようなせともの屋と明らかに違うところであろう。

 また瀬戸市役所に戻って活かせることは、という質問に対しては、「私が知る長浜の人たちが、口にし実際実行しているように、“ともに汗をかきながら動く”ことをして、いろいろな心のつながりができるなかでまちづくりをしていきたい。」とのこと。最後に「きっとそんなに簡単なものじゃないみたいです。」と補足していた。黒壁のまちづくりを肌で感じている彼女と今後も情報交換をしていきたい次第である。

 




   (1998.4.10 加藤 達志)