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スペーシア・メールマガジン(隔週発行予定)   □[第331号]2013/3/21□    □配信数 813□

スペーシア・メールマガジンの第331号をお送りします。
名古屋からの情報発信とともにまちづくりのネットワーク形成をめざしています。
今回、はじめて送信させていただいた方もよろしくお願いいたします。

<内容・目次>
  ◆視察レポート◆
  ・波蘭訪問記
  ◆図書紹介◆
  ・「図解エコハウス」/竹内昌義 森みわ 著
  ◆読者の声◆
  ◆スペーシアのこの頃◆

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◆視察レポート◆ −まちづくりに参考になるものを紹介−
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○波蘭訪問記○

1.日本で知られていないポーランド
  タイトルが文字化けしているのではありません。波蘭はポーランドのことで、ワードの
変換もOKです。しかしポーランドについて日本人はどれだけ情報を持っているのでしょう?
私自身、名古屋学院大学でのスタディツアーの学生引率補助(H25.2.16〜2.28)を
担わなければ、ほとんど意識していない国でした。持ち得ている情報は人様々ですが、
おそらく、都市名を挙げよと言われても首都ワルシャワぐらいしか思い浮かばす、
あるいは著名人を挙げよと言われても、「連帯」のワレサ議長ぐらいでしょうか。例えば、
コペルニクスやショパン、キュリー夫人やワイダ映画監督、前々ローマ法王ヨハネパウロU世
などがスラスラと出てくるとすれば、それぞれの分野に精通している人か、ポーランドに
関わる仕事をしている人ではないでしょうか?
人口3,800万人、面積31.3万km2と日本の3割、8割に相当します。

2.ポーランドの栄枯盛衰−18世紀以降は負の遺産?−
  ポーランドは中央ヨーロッパに位置し、西にドイツ、西にウクライナ、ウクライナ、ベルラーシ等
(旧ソ連)、南はチェコ、スロバキア、北はバルト海に囲まれています。ヨーロッパ大陸は
地続きなので、侵略・被侵略の歴史であり、ポーランドは激変の国の一つでしょう。966年に
ポーランド公国として認知され、1569年にはポーランド=リトアニア共和国(第1共和国)
となって、欧州最強最大の国家となりました。その間、ドイツ騎士団との激しい戦争
(タンネンベルクの戦い1410)が行われ、クラクフ市の中央広場にはその騎士団長の
討ち首である巨大ブロンズ像が置かれています(それほど憎しということ、スターリンに
似せているとも言われています)。
  しかしその後、様々な経緯をたどって、3度も国家消滅にあっています。第一が
18世紀後半のプロイセン、ロシア帝国、ハプスブルク帝国(オーストリア)による分割、
第二が1815年のワルシャワ王国の解体、第三が1939年のナチスドイツとソ連による
分割がそれです。国家がなくなると、支配者に対する蜂起がたびたび勃発し、しかし
弾圧され、拷問や虐殺、流刑が歴史に積み重なっていきます。その最たるものが
アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所で、当初はポーランドの政治犯の収容所として
建設され、ユダヤ人、ロマ、ソ連軍捕虜等の収容所に拡大されて、150万人の虐殺が
行われました。「負の世界遺産」に指定(1979)されています。ワルシャワの市街地は
終戦直前にワルシャワ蜂起を鎮圧するため、ナチスドイツ軍によって40万人のうち
半数の20万人が殺され、市街地も徹底的に破壊されました。それをもとのように復興した
ことでワルシャワの都市は有名です。国内には宮殿・王宮や劇場等の豪華な建造物も
ありますが、他方、刑務所や監獄、虐殺現場や蜂起記念館などが博物館として保存され、
それを通じて負の遺産を未来に引き継いでいます。
  ワルシャワの中心地には37階建ての高層ビル文化科学宮殿があります。スターリンに
よって建てられたその建物は、権威主義のランドマークになっているので「ソビエトの墓石」
と言われています。「ポーランド人が最も好きな場所はこの建物の展望台。なぜなら
そこからだけは、文化科学宮殿が見えないから」というブラックジョークがあります。
それほどアンチ「ソ連」なのです。

3.新しいポーランド−ものづくりの現場−
  第二次世界大戦後は、社会主義国として出発しました。それゆえ、情報が閉ざされた
感があります。1989年12月に東西の壁が崩壊し、資本主義に移行しています。社会主義の
負の遺産を払拭する大改革が行われ、年間1000%のハイパーインフレーションも経験
しました。今は物価が安定しつつ、EUにも加盟し、経済成長を遂げる国となっています。
日系企業の進出は中東欧で最も多い国で、254社(2010)にも上ります。いわば欧州の
生産基地になっているのですが、ドイツに近いエリアで製造業の立地が目立ちます。
ドイツと結ぶ高速道路が整備されつつあり、電力や水供給が安定し、労働力も安く
(ドイツを1とすると、チェコ1/2、ポーランド1/3言われています)、豊富で、治安がいい
ことが、立地の決め手となっているようです。
  都市内の公共交通機関は市電(LRT)とバスで、都市間移動は鉄道です。LRTは
ドイツ製の最新式が導入されています。

4.ポーランドと親日
  日本はポーランドでは尊敬されていると言われています。その理由の第一は、
リトアニア日本領事館の領事代理の杉原千畝氏がユダヤ系ポーランド人を命の
ビザを発給して6000人以上を救ったこと(1940)、日露戦争でロシア軍として戦った
ポーランド人捕虜4600人を日本において厚遇したこと(1902-1904)、第三はロシア
革命の混乱によって、シベリアに流刑されていたポーランド人の孤児756人を1920年と
1922年の2度にわたり、日本政府と日本赤十字社は日本に受け入れ、その後に
ポーランドに返送したこと、などが挙げられます。非人道の戦争に対比される人道的
行為が行われたがゆえに尊敬されました。

おわりに
  このように見てくると、戦争は如何に非人道的で狂気に走るのか、それに抵抗し人道を
貫くことは犠牲を伴うが、尊敬もされる、恨みつらみは100年や200年では消えない………。
歴史を学ぶことは未来を切り拓くことに繋がっているようです。しかし人間は忘れやすく、
同じことを繰り返すようであり、それを常に記憶に呼び起こす装置(それが博物館や碑)が
必要のようです。
  ここまで書いて、ポーランドを暗く重いイメージにしているのではと心配しています。実は
旧王宮や夏の王宮、オペラ座やショパン博物館など、「正の遺産」も多く、それらは観光の
目玉になっています。総じて若い女性は美しい。ある程度歳を重ねると「爆発」する女性も
目立ちますが………。ポーランド料理も日本人に合います。治安も非常にいい。そして
親日の国なので、扱いが丁寧な気がします。また、子どもたちの表情は明るい。是非
欧州コースの一つに入れてください。病みつきになりそうです。

*ポーランド訪問にあたり、家本博一名古屋学院大学教授に同行しました。その際に
  歴史から経済、宗教・文化まで、事細かに解説していただき、大変勉強になりました。
  その博識ぶりというか、情報量というか、脱帽です。解説の有無は訪問の質を左右する
  重要な要素です。大変ありがとうございました(ジンクイエ・ボルド)。
(井澤知旦)

→ホームページに写真を掲載しています。
http://www.spacia.co.jp/Mati/sisatu/2013/poland/

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◆図書紹介◆ −まちづくりに参考になるものを紹介−
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○「図解エコハウス」/竹内昌義 森みわ 著○
  株式会社エクスナレッジ/2012年12月7日発行

 ドイツ発祥の超省エネ住宅「パッシブハウス」を研究し日本型エコハウス確立を目指し
活動している森氏と、山形エコハウスなどを手がけた竹内氏の共著である。今後必要に
なる本当のエコハウスとは、「我慢しなくていい省エネ」、「健康的で快適な省エネ」であり、
目標は冷暖房がエアコン1台で成り立つ家であると述べている。
  第1章では、立地や断面構成、気密、窓といった建築に関して、第2章では、冷暖房や
換気、太陽熱温水器や一次エネルギーの考え方といった設備に関して、イラストと丁寧な
コメントで図解されている。例えば、エコハウスにした際にアップする予算に関して
「ものすごく単純化すると約15%くらいプラス、たとえば3,000万円の家なら450万円になると
捉えてください」と述べられ、窓などの開口部を最初に検討し、後から設置できる太陽熱
温水器やバイオマスストーブは次に検討すべきなどのアドバイスも非常にわかりやすい。
  第3章では、ヨーロッパの最新パッシブハウスから、森氏が賃貸のまま省エネ改修をした
タウンハウスなど様々なエコハウスの事例が写真つきで紹介されている。
  「日本の住宅はエネルギーを浪費しまっくている(飯田哲也氏)」と、「電気で熱をつくる
のは、実は電動のこぎりでバターを切るような大げさなこと(エイモリー・ロビンス氏)」の
紹介されている言葉は、本著を読むとまさにその通りであることがわかる。これからの
エコハウスや、より少ないエネルギーでより豊かに暮らす方法について考えていただく
ために、ぜひお読みいただきたい一冊である。
(山崎 崇)

参考
・図書紹介「エコハウスのウソ/前 真之 著」
http://www.spacia.co.jp/Mati/tosyo/ecohousenouso.html

・図書紹介「原発と建築家/竹内 昌義 編著」
http://www.spacia.co.jp/Mati/tosyo/genpatsutokenchikuka.html

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◆読者の声◆ −みなさんからいただいた感想や意見を紹介−
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(みなさんからのご意見・ご感想をお待ちします)

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◆スペーシアのこの頃◆ −所内の話題をちょっと紹介−
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・年度末となりました。異動などでのお知らせがそろそろ届き始めています。
  アドレスの変更をされる方はお知らせ下さい。よろしくお願いします。

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(株)都市研究所スペーシア 編集:浅野 健
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