文化庁が2020年の東京オリンピックまでに100件程度の認定をめざし、平成27、28年度の2年間で37件を認定した「日本遺産」。残念ながら、愛知県の認定はまだないが、これまでの文化財行政が個々の遺産を「点」として指定・保存し、保存を重視していたものが、点在する遺産を「面」として活用・発信していくという「活用」を重視した取り組みとして注目している。
訪日外国人旅行者数2000万人を達成するという政府の方針を受けたもので、観光という側面は大きいが、文化財を指定にこだわらず、幅広く捉え、それらを取り巻く自然や景観などの周辺環境まで含めて総合的に捉えるということは、これまで見過ごされてきた新しい価値の発見につながり、地域の人たちによる多様な取り組みに繋がっていく可能性があるように思う。
近県では岐阜市、明和町が地域型で認定されている。複数の自治体で申請するシリアル型と異なり、単独の市町村で申請するもので、よりその自治体の個性が明確となる。岐阜市は「信長」、明和町は「皇女斎王」だ。地域型で申請するには条件があり、その1つが歴史文化基本構想だ。平成19年にその策定が提唱され、モデル事業での策定も含め、40程度が策定済みで現在策定に取り組んでいる市町村も多い。スペーシアでも瀬戸市の構想策定のお手伝いをさせていただいている。
瀬戸市といえば「せともの」がやきものの代名詞になっているように、やきもの関連の文化財が多く、それがまちの個性を作っている。様々な視点からの捉え方ができ、知れば知るほど興味深い。あまりにもやきもの関連のものが多い故にそれだけのようにも思ってしまうが、それだけではない。6月に馬ヶ城浄水場の見学会に参加したが、コンクリートダムを流れ落ちる水の姿は美しく、そのすぐ近くにある近代建築物の管理棟とあわせて緑の中にたたずむ景観は魅力的だった。他にも地域の個性的な祭りなど、まだ体験していないが、いろいろな要素がありそうだ。このような多様な魅力を日本遺産として発信できればと思う。
平成28年度は67件の申請に対して認定は19件。ハードルは高い。いかに魅力的にその価値を情報発信できるかが重要だろう。瀬戸の魅力を肌で感じるようにしたいと思う。
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