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和風建築と現代芸術 −あいちトリエンナーレほか−

 8/11(木)より、あいちトリエンナーレが名古屋・豊橋・岡崎の3会場で開催されている。今回で3回目ということもありご存知の方も多いと思うが、あいちトリエンナーレにおいて、現代美術を展示する専用美術館があるわけではない。現代美術の手法の一つとして空間演出や環境芸術があるが、あいちトリエンナーレでも、長者町繊維街や岡崎会場のシビコなど、本来展示施設ではない空間に作品を飾ったり、空間そのものを作品の一部として見立てたりしているものがある。こうした和風建築を活かした現代芸術の中から、最近私が経験して、素人ながら面白いと思ったものをいくつか紹介したいと思う。

◆旧石原家住宅/あいちトリエンナーレ
古民家を展示施設とした例。建物は国登録文化財である。土間と和室3室で構成された主屋には、香辛料を魅力的にディスプレイした棚や、屋内外の明暗差を利用したインスタレーション作品などが展示されている。当建築は常時開館ではないものの、所有者により音楽会が開催されるなど積極的な利用がされており、訪れるたびに違う雰囲気を味わうことができる。
◆堀田家住宅/つしまアートスケープ
古民家を展示施設とした例。建物は国重要文化財である。桁行7間半、梁間7間の広い空間に8名の作家が作品を展示した。手入れされた坪庭や解放された茶室があり、それだけで十分見ごたえのある建築であったが、土間の高い天井高を活かした「境界を越える」や、不思議な和音を奏でる「ひかりレコード」など、既存空間を侵害しないながらも異世界へ引き込む作品が印象的であった。

◆明治座/明治座トリエンナーレ
芝居小屋を展示施設とした例。5/1?6/5に岐阜県中津川市加子母で開催された芸術祭では、芝居小屋「明治座」が展示会場となった。舞台構造を活かしたパフォーマンスや、地元の木材を使用したワークショップなどが行われた。特に印象的だったのは、景山健氏の「ここにおいて」である。板材を床から天井まで複雑に組み上げた作品であるが、この板材は昨年(平成27年)屋根を瓦葺きから板葺きへと復原した際に出た廃材である。明治座という空間“を”表現したという点でとても魅力的であった。

◆ストーム・ハウス/瀬戸内トリエンナーレ
古民家を作品とした例。畳にあがると光や音の演出により、嵐の夜が再現されるインスタレーション作品である。窓ガラスの振動や水のたまったバケツなどから、不安感を感じるが、作品から出たときの穏やかな気候に建物内外のギャップを感じられ、おもしろい。

◆家の記憶/越後妻有 大地の芸術祭
古民家を作品とした例。室内全体に黒い糸が張り巡らされている。2階の床は剥がされ、生活用品もほとんどないが、一部衣類や本が残され糸により固定されている。生活の中で建物に染み付いた記憶や、小物に対する愛着を黒い糸で表現しているようである。
和風建築に限らず建築は、作家にとって表現の場であり、創作のきっかけともなるようである。各地で空家が問題となっているが、「芸術」という活用は、建築物にとっても、作家にとっても、一般市民にとっても、新しい価値を生むチャンスである。3年に1度と言わず、積極的に活用をしていきたいところだ。

  今回取り上げた芸術祭のうち、以下のものが現在開催中である。興味のある方でまだ参加されてない方は、ぜひ参加し体感されてはいかがだろう。
・旧石原家住宅/あいちトリエンナーレ 岡崎会場:10/23(日)まで
・ストーム・ハウス/瀬戸内トリエンナーレ 豊島会場:11/6(日)まで


明治座/明治座トリエンナーレ
(2016.10.10/日高 史帆)