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多設計段階から住民ニーズを反映させ、
完成後も住民とともに歩みつづける田原市図書館

 田原市は愛知県東部に位置し、旧田原町と旧赤羽根町の2町が合併して平成15年8月に誕生した市である。その生涯学習の拠点である田原市図書館は、市民ニーズを設計・施行に反映させたこと、図書館の新設と既存の公共施設(総合体育館・文化会館)の一部改修によって相乗効果をもたらすようなプランニングがされたこと、という点で特筆すべき施設である。

 元々は旧田原町の第3次総合計画(昭和63年3月)に図書館建設が位置づけられたのが発端。平成8年に図書館建設構想委員会を立ち上げたあと、プロポーザル方式で図書館の建設で実績があった和(やまと)設計を選定し、図書館運営に実績のある人を職員として採用して、運営方針がプランニングに伝わるような体制を整えた。その後、基本設計、実施設計を経て平成12年11月に図書館建設着工、平成14年8月にオープンした。この間、設計・施工段階で9回のワークショップ(情報広場)を開催して市民ニーズを反映させている。

 図書館自体は、書物の管理を配慮して南側に壁を設けて直射日光をなるべく遮りつつ、6つの中庭と3つのテラスが配置されることで、自然光、緑を感じながら読書が楽しめるよう配慮している。また、開架スペースを小さな房に分節して資料ごとに分節化しつつ間仕切りを少なくして回遊性を持たせるなど、豊かな空間を構成している。施設全体では、中央のアトリウム・プロムナードを介して文化会館、体育館、図書館に自由にアクセスできるようにし、住民活動を支援するためのフリースペースも設けている。また新たに情報センターの機能も付加した。

 運営面においては、図書、雑誌、視聴覚資料など35万点の収蔵もさることながら、録音図書・点字図書・大活字本など障害を持つ方へのサービスも充実している。ボランティアのスタッフが手づくりで飾り付けをしているのもほほえましい。11月末の土曜日に訪れた時には、静けさが求められる図書館で表現がふさわしくないかもしれないが“活気がある図書館”という印象をもった。

 建物にはしっかり費用をかけた割に利用されない公共施設を称して“ハコモノ“などと揶揄されるが、設計段階から市民ニーズを反映させ、スタッフが充実するなどハードとソフトの両面でしっかりと配慮されれば、市民に利用され”ハコモノ“ではない価値ある公共施設となる。田原市図書館・生涯学習施設は、今後の公共施設の方向性を示す一例ではないかと思った。





(2003.12.26/浅野 健)