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 豊川稲荷門前町のまちづくり

 先日、建築学会東海支部都市計画委員会主催の春の交流会に参加し、豊川稲荷と門前町を訪問した。
 名鉄豊川稲荷駅・JR豊川駅前から豊川稲荷にかけて東西に表参道が貫き、表参道には飲食店や土産屋などの商店が軒を連ねている。どこか懐かしい雰囲気が残るこの商店街では、現在、住民主導のまちづくりが活発に進められている。
 表参道のある豊川地区は、豊川稲荷の門前町として栄えてきたが、近年は参拝客が減り、表参道の活気も徐々に低下していた。そこで、豊川市では都市計画道路の景観整備事業など、ハード整備(表参道の道路拡幅など)を中心としたまちづくりが計画されていたが、ハード先行のまちづくりや商店街の意欲不足などもあり、なかなか事業が進まなかった。そうした中、商店街の若手店主による意見から「できることから始めるまちづくり」を合言葉に、門前町という空間、今ある表参道を活用し、お金をかけずに住民主導によるまちづくりを進めることになった。平成14年に商店街の若手店主を中心とした「いなり楽市実行委員会」が発足し、以後、様々な活動が展開されている。その中でも代表的な活動が「いなり楽市」である。基本コンセプトは「ちょっと懐かしいレトロな異空間」。自由市、ちんどんや行列、フリーマーケット、地域の住民や学生によるストリートパフォーマンスなどのイベントが月に一度(3月〜11月の第4日曜日)開催されている。毎回約2万人の来街者が集まっているそうだ。また、平成19年には、商業者や市民らが出資して、まちづくり会社「株式会社豊川まちづくりそわか」が設立され、まちづくりの拠点「いっぷく亭」も開設された。「いっぷく亭」には、休憩スペースやギャラリーがあり、文化教室や地区オリジナル商品の開発・販売も行われている。また、「いっぷく亭」の奥には、豊橋技術科学大学松島史朗准教授の研究室(サテライト・ラボ)も開設されており、地域に密着した調査・研究が行われている。平成18・19年度に社会実験として実施された商店の改修工事では、研究室の学生による実測や外観のアイデア提供などが行われた。平成20年度からは市による景観助成も開始されている。研究機関が加わることで景観整備が進み、結果的にはハード整備も少しずつ進んでいる。
 できることから始めた結果、今では2万人もの人々を呼び込むイベントが恒例行事となり、景観整備基準も住民主導で制定されるまでになった。ここまで来るのには相当なご苦労があったと思うが、まちづくりの主体である商店街の方々、サポートする市職員の方々が楽しみながらまちづくりを実践している姿が非常に印象的であった。次の機会には「いなり楽市」を訪ねてみたい。


豊川いなり表参道



まちづくり拠点「いっぷく亭」


外観が改修された店舗@(キング堂) レトロな雰囲気に・・・


外観が改修された店舗A(手焼堂)


レトロな看板(昔使われていたもの)
(2009.5.25/喜田 祥子)