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木造都市研究会「木愛の会」

 木を愛する会=「木愛の会」、単純なネーミングであるが、ここにみんなの思いがこめられている。命名したのは建築家であり京都大学大学院教授の高松伸・木愛の会会長。私は、この会の世話人の1人として昨年途中から参加しているが、最初この会のことを聞いた時、「高松氏が木造」というのに大きな違和感があった。 高松氏が30代で颯爽とデビューした時の作品群が強烈であっただけにその印象が強すぎたのだ。
  その後、世話人会やセミナーなどを通じて、高松氏の木のかける思いを伺い、イメージが大きく異なってきた。今年、7月に竣工した丸美産業本社ビルは日経アーキテクチュアなどでも紹介されているが、既存の技術を組み合わせて木の構造を見せた5階建のビルで、高松氏の設計である。現在の法規制と技術の中では、木造による5階建ビルの建設は不可能であるが、木質ハイブリッド構造材を採用するなどにより、「あらたしい木の建築」を提案しており、木造都市への可能性を感じさせる。

  木愛の会は、この丸美産業本社ビルの取り組みと連携する形で2006年12月に発足。趣旨書の中で
(1)循環型社会の構築のために木材を使いましょう
(2)大海原の可能性の有る木で、新しい建築を考えましょう
(3)「木造都市」を提案しましょう
(4)建築や関連業態を志す者や学生に、近未来の木の建築を学べる場を提供します
 ことを打ち出し、セミナーや学生コンペなどを行ってきた。後者は、第一回設計競技と銘打ち、「新しい木の建築−魅了する木造都市へ-」をテーマに募集したもので、初めての試みで、このような小さな会のコンペにどれだけの応募があるのかと不安であったが、24の意欲的な提案が集まり、若い世代においても木造に対する関心は高く、木造都市への可能性を感じるよい機会となった。私自身にとっても、コンペの審査員を務めるという貴重な機会となった。入選作品については木愛の会ホームページに掲載しており、ぜひ参照されたい。

 建築雑誌10月号が「木造建築の到達点」を特集にするなど、近年木造建築に対する関心が高まっている。コンペの表彰式でも学生から「木はトレンド」という発言が聞かれるなど、木に対する考えが大きく変わってきたように思う。今年のすまいる愛知住宅賞では、愛知県森林協会賞が新たに設けられ、木愛の会代表世話人田中英彦氏設計の豊田元町ビレッジが受賞した。個々の建築において、どんどん木が使われるようになれば、人々の木に対する意識も変わってこよう。
 「かつて日本の都市はすべて『木造都市』だった。・・・コミュニティの記憶を忘れつつある現代において、その記憶を呼び起こす力が『木』にはあるのではないか」(コンペ呼びかけ文)。木の可能性をさぐり、木造都市を夢みてみたいと思う。

木の可能性を感じさせる丸美産業本社ビル
その1階ギャラリーでのコンペ作品展示
表彰式と合わせて実施した高松氏を囲む座談会 豊田元町ビレッジ(3月の見学会時の写真)
RC造であるが木をふんだんに取り入れている。
(200810.13/石田 富男)