「自転車ツーキニスト」や「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」などの自転車に関する数々の著書を持つ疋田氏の最新作である。これまでの本と同様に、自転車をとりまく状況、都市交通の主役をクルマから自転車にシフトした理想的な将来像などが分かりやすく理論的に書かれている。自転車を有効に活用する理想的な社会に変えていくには、自転車が安全に走ることのできる車道・自転車レーン、駐輪場や自転車用信号機の整備、公共交通の充実などのインフラや法律による改善が必要である。一方、自転車に乗る人が将来に向けて「今できること」はないのだろうか。『自転車の走行区間は、とりあえず車道・歩道を問わない。ただし、どちらを通る場合であっても、左側通行を厳守すること』と、その答えがこの本には書かれている。
日本が自転車を有効利用していくためには、先進国中10年間以上不動の1位である自転車事故発生率の高さを早急に改善しなければならない。日本だけが歩道を自転車が走っている、日本の自転車だけが進行方向が左右デタラメであるという2点の「絶望的にユニークな自転車政策」が自転車事故大国を生んでいる。前者については、全ての自転車を今すぐに歩道ではなく車道を走らせるというのは無理がある。しかし、後者については自転車を乗る人が交通ルールを守るというすぐに実践可能で、かつ効果的な「秘策」である。右側通行や対面通行をしないことで出会い頭、正面衝突による死亡事故が半減するというデータには納得させられる。
左側通行を徹底するためには、回り道や自転車を押して歩くことが必要になり慣れるまでは面倒に感じるかもしれない。しかし、自転車も都市交通の一部である以上、交通ルールは守るべきである。左側通行の徹底は自転車事故を減らすだけでなく、歩行者の安全を守り、自転車を快適な交通手段に寄与するための最初の道であるという著者の考えには共感させられる。『この本を書いた理由の半分程度は、この「左側通行」のメリットを提示すること』と本の中に書かれており、一人でも多くの人にお読みいただき、左側通行を実践してもらいたい。
<関連ページ>
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由/疋田智 著」 http://www.spacia.co.jp/Mati/tosyo/soredemozitensya.html
「自転車ツーキニスト/疋田智 著」
http://www.spacia.co.jp/Mati/tosyo/tukin.htm
「自転車とまちづくり−駐輪対策・エコロジー・商店街活性化/渡辺千賀恵 著」http://www.spacia.co.jp/Mati/tosyo/zitensya.htm
|