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川からの都市再生 ―世界の先進事例から― /財団法人リバーフロント整備センター
技報堂出版/2005年3月発行

 韓国のソウルに「清渓川(チョンゲチョン)」という川がある。清渓川は、数年前までコンクリートで塞ぎ道路が整備され、その上には高速道路が走っていた。そこから、再び河川へ戻し、水辺空間をソウルの人々の憩いの場として見事に再生させている。
 韓国における都市再生の代表事例として、また、世界においても河川再生の先進事例として、講演会や書籍・雑誌等で度々紹介されている。本書は、清渓川プロジェクトが進められていた2004年時の報告ではあるが、再生事業に直接関わったソウル特別市の副市長や担当官(いずれも当時)による報告が記載されており、清渓川再生プロジェクトの全容が分かる内容となっている。
 清渓川再生に関して多くの方が疑問に感じる点として、高速道路を含む道路の撤去を実現させている点が挙げられると思う。特に大都市において、高速道路や主要道路を撤去すればさらに交通渋滞が悪化することは容易に想像でき、日本で同様の計画が持ち上がった場合、とても実現できそうな事業とは思い難い。また、市民からも強く反対されそうなものである。実際、ソウルにおいても道路の撤去は強く反対された。
 そこで、ソウル市は全市民に対して、「自主的に自家用車をやめてくれれば、皆さんに天国、パラダイスをあげる」と約束している。この“天国、パラダイス”は、都会の真ん中でいつでも川や自然に触れられる空間や高速道路を撤去したことで視界が広がり南側に位置する美しい山(南山・ナムサン)が望めるようになったことを指している。また、市民への呼びかけだけでなく、実質的な交通対策として、それまで民間が運営していたバスを市営とし、バス交通網を全面的に改変している。これまで市内を通っていたソウル郊外から来るバスは、バスターミナルや地下鉄駅までとし、そこから市内バスや地下鉄に乗り換えるようにしている。清渓川再生はハードとソフト両整備が非常に上手くできていると思う。
 本書は、清渓川の歴史から清渓川再生の経緯、再生計画の詳細まで記載されており清渓川に関する疑問点を解決することが出来る。清渓川再生に関心を持たれている方には、是非おすすめしたい1冊である。

(2009.12.21/喜田祥子)