現在の位置:TOP>まちづくりを学ぼう>図書紹介>美術館の可能性 WWW を検索 スペーシアサイト を検索

 

「自転車”道交法”BOOK」/疋田 智・小林 成基 著

竢o版社/2014年2月20日発行

 昨年2013年12月の改正道路交通法の施行による自転車の「路側帯の右側通行禁止」は、テレビや新聞等でも大きく報道されたので、ご存知の方も多いと思う。しかし、報道をご覧になって、自転車は車道や歩道のどこを走るのが法律的に正しいのか、どのように走るのが安全なのか、明確にお分かりになった方は少ないと思われる。原則車道左側が十分に理解されず微妙にズレた報道もあったようだが、法改正自体は「日本の道路行政にとっても長足の進歩」と、自転車活用に真剣に取り組む著者の疋田氏と小林氏が高く評価している。
  しかしながら、今回の改正で全ての法律上の課題が解決されたわけではなく、また自転車が安全に走ることのできる車道・自転車レーンや自転車用信号機などの整備も残念ながらまだ十分ではない。欧州とは異なり、法律と道路が整備されていない日本では法律どおりでは安全で合理的な自転車走行はできないという著者の見識は、実際に自転車に乗る者であれば納得できるものだと思う。この本では、左折レーンのある交差点の直進、駐車車両や停車中のバスの脇の通過など、様々なケースが実際の写真や道路イラストを用いながら、現実的で安全に自転車で走る方法が丁寧に解説されている。
  また、自転車の基本的なルールや自転車保険についても紹介されている。自転車の基本的な走り方を一つだけ紹介しておきたい。『車道が怖くて走れない人は歩道を「遠慮しつつ、緊張して」通行する』というものだ。自転車で歩道を通る場合は徐行、歩道は交通弱者である歩行者最優先、歩道上の事故は原則歩行者に過失はないという四大地方裁判所の基準など様々な現状を踏まえた、簡潔でわかりやすい走り方だと思う。
  法改正以外にも国土交通省のガイドライン公表など、自転車の状況は激変し、一昨年発行した「自転車はここを走る!」に大幅な加筆修正を加え、2014年時点の自転車を取り巻く状況を伝えるべきだという著者の気持ちが十分にわかる内容である。多くの人に手に取っていただきたいが、自転車に乗った子どもが歩行者に大きなけがをさせてしまい、事故による高額賠償判決も増えているので、特にお子さんが自転車に乗る方にはぜひ活用いただきたいと思う。


(2014.2.18/山崎 崇)