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朝倉彫塑館

  朝倉彫塑館とは、東京都台東区にある 彫刻家 朝倉文夫 のアトリエ兼住居だった建物で、現在、台東区立朝倉彫塑館として一般公開されている。建物は2001年に国の登録有形文化財に、中庭と屋上庭園は2008年に国の名勝に指定されている。2009年からは耐震補強を兼ねて、大規模な修復工事が続けられていたが、昨年、リニューアルオープンを向かえた。

 朝倉氏は「東洋のロダン」と呼ばれた、日本の彫塑界をリードする中心的な存在であり、その作品は一級品であるが、朝倉氏自ら1928年から7年の歳月をかけ設計したその建物も、一般の建築家ではやらないような、とても独創的な建築となっている。
 まず、この建物、日本ではごく初期の鉄筋コンクリート造(RC造)の戸建て住宅である。住宅地にあって、黒く塗られた荒々しいコンクリートの外観はひときわ異彩を放っている。また、アトリエ上部にある屋上庭園も、ル・コルビジェが「近代建築の5原則」の中で屋上庭園を発表した時期と同じ頃に設計されていることを考えると、とても先進的な発想で設計されていることがうかがえる。
 アトリエ内も工夫が凝らされている。通常、大きな彫刻を制作する場合は作品の周りに足場を組んで、高所での作業が必要になるが、このアトリエには約7m地下を掘り下げ、そこに電動モーターによる昇降装置が設置されている。これにより作品を上下させることで、常に地上レベルで安定した作業ができるようになっている。また、アトリエ内に自然な光を取り入れるため、北向きにトップライトを設け、部屋のコーナーをすべてアールにすることで、アトリエ全体に均一な光を巡らすことを可能にしている。
 また、今回の修復工事で、謎の地下室の存在も明らかになった。これは、「見る方向で違う形の変化を研究したい」という氏の考えから、下から見上げる像の姿を研究するため掘られことが、氏の随筆から明らかとなった。彫刻のためには徹底してアトリエを作り込む姿勢がここでもうかがえる。
  他にも、内装では竹の腰板や、コンクリートの擬木によるベランダの手摺りなど、珍しい意匠が随所に見られ、古さを感じさせない独創的な魅力が満載の建物となっている。

壁面
黒くアールのついた壁面が異彩を放つ。
屋上庭園
大きなオリーブの木がある屋上庭園。内部は写真撮影禁止なので、写真がありません。
(2014.4.14/堀内研自)