住まい・まちづくりに係わる愛知のコンサルタントで構成される協議会(通称:まちコン)の春恒例の視察会で金沢市を訪れた。訪問先は金沢市民芸術村と金沢21世紀美術館。どちらも金沢市民の文化・芸術の交流拠点の場となっている。
金沢市民芸術村は、紡績会社の倉庫群であったところを文化芸術活動の場として再生した施設である。施設内には、演劇や音楽の練習、作品展示や発表、ワークショップの開催等の文化活動が行える屋内施設のほか、レストランや大広場がある。「市民が主役」を基本目標とし、公立施設としては珍しく年中無休で利用できたり、市民ディレクター制度を導入し自主運営の円滑化を図るなどの特色がみられる。屋内施設の利用料金は300円〜2,000円の間で設定されており、民間の施設に比べ低料金に抑えられている。これは、「文化芸術の裾野が広がるのであれば」という周辺の民間施設の理解もあって実現しているそうだ。運営は、金沢市が毎年約1.5億円程度を投資しており、市が如何に文化芸術の振興に力を注いでいるかが感じとれる。敷地内には加賀伝統工芸を伝承する「金沢職人大学校」も併設されており、市民活動の場と伝統工芸を伝承するための学校が同じ場所にあるというのも非常に面白い。大学校では、板金、石工、大工、造園、瓦など9つの科があり、生徒は30歳から50歳までの職人が対象となっている。市の出資で開設されているのだが、学費も無料というのには驚きである。ここでも市の文化芸術に対する熱い姿勢が感じられる。
もう一方の金沢21世紀美術館は、妹島和世、西沢立衛が設計したことでも知られ、今では兼六園に次ぐ金沢市の顔ともなっている。この美術館には『まちに開かれた公園のような美術館』という建築コンセプトがあるが、公道から美術館までは芝生の緑地空間となっており、また柵なども一切ないため誰でも気軽に立ち寄れる雰囲気がある。建物がガラス張りのため、美術館側からも車や通行人の姿などまちの様子が良く見え、「まち」と「美術館」が程よい距離をとりながら相互に良い関係を築いているようにみえる。
金沢市では「金沢文化振興財団」と「金沢芸術創造財団」の2つの財団を設置し、文化芸術の振興に努めている。市の体制が整っていることは非常に大きいが、市民をディレクターとして迎えるなど特色ある取り組みは非常に参考になった。 |