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美の条例の町 真鶴町巡る

 先日、神奈川県真鶴町を訪れる機会があった。真鶴町は、面積7ku、人口1万人弱、海抜0〜700mの起伏に富んだ町である。真鶴町は、1994年に「まちづくり条例」を定め、全国にも類を見ない独自のルールとして「8つの美の原則」とデザインコード「美の基準」を位置づけた「美の条例」の町として知られている。また、2004年に施行された景観法に基づき、政令指定都市、中核都市以外の市町村としては全国初の景観行政団体となっている。
 実際に町を巡ると、デザインコード「美の基準」で掲げられているように、車で通れない「背古道」、地場材料の小松石を用いた「石垣」、木々の合間から海を見下ろす「垣間見る風景」、段々畑やみかんの直売所、魚市場など「山の仕事 海の仕事」の風景が見られ、昭和30年代、40年代から時が止まったような懐かしさを感じる。木造、非木造の建物が混在し、デザインも在来のものから洋風なものまで様々であるが、箱根や熱海・伊豆など国内有数の大観光地に挟まれた中、視界をさえぎるような大規模な建物の立地が少なく、風景がよく保たれていると思う。真鶴町のように急勾配な傾斜地が広がる地域では、仮に高さ制限のような数値による規制をしたとしても地下階の位置の解釈によっては高層建物の建設が許可されてしまう可能性があり、デザインコードによる手法を選択した意味が理解できた。
 デザインコードに似た取り組みとしては、真鶴町のように条例や景観法への位置付けるまでには行かないまでも、地元の人たちにより地域資源や景観資源を再評価する試みとして全国各地で増えてきていると思う。このような中で、まちづくり条例の制定から15年が経過した今だからこそ、町を巡ってその条例の効力を肌で感じられる。小さな町の身の丈にあった景観への取り組みの先進的なケースとして大いに参考になった。
 なお、観光面では、観光案内情報センターや魚座などの拠点施設や、真鶴半島の先端のケープ真鶴、丘の上から海を眺められる美術館、ヨットハーバーなどの諸施設が立地し、随所に見られる観光案内版、地元の石を使った案内表示、地元産の石で化粧した護岸・遊歩道などの整備が進んでいる。毎年7月に行われる貴船まつり(国指定重要無形民俗文化財)、源頼朝船出の浜である岩海岸、幕末に品川台場に真鶴産の石が使われたなどの歴史の香りも随所に見られる。横浜方面のハイセンスな来訪者に磨かれていることもあり、歴史と現代の文化が融合する観光地としても参考になる点が多い。

真鶴港の風景


地元産の小松石で化粧されたコンクリートの護岸
丘の上から垣間見る風景 御林の中にたたずむ中川一政美術館
(2009.3.30/浅野 健)