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無垢のスギ材外壁のオフィスビル(第15長谷ビル)/京都 

  先日、「木愛の会」のセミナーに参加する機会があり、京都四条烏丸エリアにある「第15長谷ビル」を訪問した。(木愛の会についてはこちらを参照)
 第15長谷ビルは、平静20年4月に完成し、地上9階、敷地面積410.15u、建築面積352.85u、延床面積2870.87uである。ビルの高さは、京都市が平成19年9月に策定した新景観政策によって31mとなっている。(職住共存地区以外のエリアでは、建物の高さ規制が45mから31mに引き下げられている)
 ビルの外壁は、無垢のスギ材で覆われており、共用部分の床やサッシ等にも木材を多用し、オフィスビルには珍しい吹き抜けがあることが特徴である。オーナーである長谷ビルは、京都を中心にオフィスビル等を展開しており、伝統を受け継ぎながら、時代の感性を取り入れ、街に新たな価値を創出することを考えている。
 外壁のスギは、メンテナンスとデザインのために階の間に取り付けたコンクリートの庇によって日差しや雨を遮り色褪せを防いだため、1年が経過した現在でもあまり色褪せていないが、設計者は早く木特有の色褪せた色になることで、さらにスギの良さが際立つと考えている。京町家等にみられる木の色合いが、オフィスビルでみられるようになった時、周辺ビルとどのように調和し、またどんな印象を与えるかが楽しみである。
 ビル内は、オフィスビルというよりも商業ビルのような感じを受けた。その理由とは次のようなことが挙げられる。木が細部に使用されているため、通常のオフィスビルのように無機質ではなく、木のぬくもりが溢れる空間となっていること。また、吹き抜けによって内部にまで光が入り込み、町家の坪庭の役目を果たしていること。さらに、通常のオフィスビルでは、他のフロアの人と顔を合わせることはあまりなく、物理的距離は短くても精神的な距離は遠いものであるが、その距離を吹き抜けがあることで、顔が見え、気配を感じることができる共有的な空間を創り出し、オフィスビル特有の閉鎖的な感じをなくしていることである。吹き抜けは、空気の自然な循環を作り出すことが可能となり、不要な空調使用を抑止することにもつながっている。
 木材には、間伐材も使用されている。間伐材を使用することで、山林等の産地や林業の活性化を視野に入れている。近年、このような取組は少しずつ増えてきているがあまり世間に浸透はしていない。現在、このオフィスビルには2社しか入居していないが、今後さらに入居が増えていく中で、ここで働く人たちが木の良さを再認識していくのではないだろうか。


外観


オフイスから共用部分をみる



ビル内の吹き抜け
  (2009.5.11/朝倉卓也)