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黄金町バザール〜まちづくりとアートイベント〜/横浜市 

  「黄金町バザール」昨年の9月から11月にかけて横浜の商店街で開催されたアートイベントである。会場となる横浜市黄金町は、かつて売春や麻薬売買の違法行為が横行する街として有名であった。黒澤明監督の「天国と地獄」では、麻薬中毒者がふらつくあやしい街として登場する。実際、昭和40年ごろには、麻薬の入荷待ちをする人たちが100〜200人も集まっていたそうだ。こうした町の浄化が本格化したのは90年代後半からで、2002年には地元町内会を中心に組織を立ち上げ、行政や学校、警察などと協力して違法店舗の一掃に取り組む。その結果、違法店舗は閉鎖状態となるが、代わって空き店舗の問題が浮上する。その対策の一環としてアートイベントを契機としたまちづくり「黄金町バザール」が開催された。
  「黄金町バザール」の拠点となるのは、京浜急行線の高架下に横浜市が整備した「日ノ出スタジオ」「黄金スタジオ」の2つのアートスタジオだ。ここには、カフェやショップ、ギャラリー、アトリエが入っている。この2つのスタジオの他、周辺では約30か所の空き店舗や商店で催しが開催された。
 作品は参加型のものが多く気軽に楽しめる。例えば、石垣克子氏の作品は、沖縄の空の写真を短冊状にした紙を紙縒りにしてミサンガのような輪を作り、それを繋げていくというインスタレーションだ。私も制作に参加してみた。作り方はその場でアルバイトに教えてもらい15分くらいで製作する。その間、アルバイトの人との世間話はとても楽しかった。少し余談ではあるが、スタンプラリーも行っていた。すべて回れる時間はないので、やる気はなかったがそのスタンプがかわいらしいデザインだったので、押して回っていたら、1か所スタンプを紛失してしまったという会場があった。なんともずさんな、と思ったがその会場のおにいさんが、自分が代わりに描きますと、他のスタンプよりかわいらしい小鳥の絵を描いてくれた。なんとも微笑ましく、商店街のぬくもりを感じる出来事であった。
 さて、アートイベントをまちづくりとして行う意味は何か。「黄金町バザール」のディレクター山野真悟氏こう語る。「黄金町を訪れた多くの人たちがこの街に対する関心を新たにし、魅力を感じて、自らこの街に関わり、何かをやってみたいと思うようになること、そういう人たちが増えて地域のまちづくりに加わっていくようになれば、街は急速に変わっていく。」
 2010年には愛知県でも大規模な国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2010」が開催される。県の財政危機が叫ばれる中、キュレーターを務める建畠哲国立国際美術館長はこう呼びかける。「不況の時こそ文化芸術の力で精神を高揚させるべきだ。」そして、ボランティアの募集や商店街での関連イベント開催を通じ、県民参加の芸術祭を目指す方針だ。街へ飛び出した現代アート自身も、こうした人の行動を触発する力を持つことが生き残りへの重要な課題となる。


高架下の「日ノ出スタジオ」



「小金スタジオ」の八百屋のようなアート作品



昔の違法店舗を活用したアート作品

  (2009.2.2/堀内研自)