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トロント・ボストン探訪

 9月1日から8日間の予定で、海外での「多様な中心市街地活性化事業」をテーマにした都市再開発事情調査団に参加し、カナダトロントとアメリカボストンを訪問した。ここでは、公式訪問の合間にみた街の様子について簡単に報告をする。

【トロント】

 オンタリオ州の州都でありカナダ最大の都市。トロント市の人口は約250万人(2006年)で長い歴史の中で移民が増加し形成された多民族都市。
 街のランドマークは一時地上建築では世界最高を誇った「CNタワー」で、地上553m、展望台も447mの高さにありトロントの街が一望できる。
 街の中心部は道路が碁盤の目のように通り、LRTが市民の重要な交通手段として活躍している。また地下には「PATH」と呼ばれる地下道が広範囲に亘り整備され、駅、公共施設、民間施設等にアクセスしている。名古屋の地下街の感覚で利用していたら自分の位置が分からなくなるほど。
 街並みは、1965年に完成したトロント市庁舎を筆頭にユニークなデザインの建物や近代的な高層建築が林立し一大都市が形成されている。また、オンタリオ湖沿岸線周辺には高層マンションが多く価格は湖に近ければ近いほど高く1億円以上に。かつては、街のどこからでもCNタワーがみえまさに街のシンボルだったが、高層マンションにより湖側からはその姿がかすむほどに。
 トロントは、今夏の五輪候補地として北京と最終選考まで争った都市で、その競技場整備予定地は現在未利用のまま残されている。このエリアの開発が今回の調査目的の一つで、現在大規模な開発事業が進められている。その開発の背景には移民による人口増加があるようで、島国日本が抱える人口減少の問題はあまり意識されていない。

トロント市庁舎

ウォーターフロント開発計画の一部
湖に面して建つ再開発ビル/下層階は店舗事務所、上層階はコンドミニアム)
開発予定地から望むトロントの街並み

【ボストン】

 ボストン市の人口は約60万人(2006年)で、芸術、教育、自然、スポーツなど、様々な分野で魅力的な都市といえる。現在の市域は、1960年ころから埋め立てにより形成され、当時の3倍までに広がっている。
街の中心は「ダウンタウン」と呼ばれるエリアで、アメリカで最も古いといわれる公園「ポストコモン」や市庁舎を始めとする行政施設、商業施設が集積する。昔この地域は、船乗り達の遊び場として栄えつつも環境の悪化が進んだことから、それらの建物を全て取り壊し行政施設が整備された。市庁舎は設計コンペで決められたが、設計者は“1セント硬貨の裏面にデザインされたリンカーン記念館を逆さにした”というデザインコンセプトで設計して見事当選したらしい。
 ボストンといえばレッドソックスの本拠地「フェンウェイパーク」だが、残念ながら行程中は試合がなく案内ツアーに参加し球場を視察。旧さが魅力の球場だが歴史的価値から文化財として保全しようという動きがあり、日本と同様文化財指定を受けると手を加える事が難しくなるらしく、スタンド等の増築や様々な改修工事が進められている。
 アメリカ最古の大学ハーバード大学は、中心部から地下鉄で15分ほどに立地する。大学敷地内には、旧い建築様式の建物が並び、研究施設や美術館、博物館として利用され、キャンパス内の建物を見ているだけでも時間を忘れる。また、大学周辺は学生や観光客目当ての飲食店やショップが並び繁華街の雰囲気。
同じく都心から地下鉄で15分ほどにはボストン美術館がある。建物は、当時のものに増築され展示室は100を超え、現在も大規模な増築計画があり一部で工事が進められている。展示コレクションの数とスケールは圧巻。 ボストンの街は、道路が複雑に交差し起伏があり、地下鉄は100年以上の歴史を誇る。また、球場や大学、高級住宅街コモンヒルにみられる旧い建築様式の建物が現存し、昔からの都市基盤、街並みが残る。一方で、高層ビルの建設による摩天楼化も進みつつあり、こうした新旧共存が都市化されたトロントとは違う街の魅力となっている。

ボストン市庁舎

1セント硬貨裏面のリンカーン記念館

倉庫を改修して整備されたフェアニアルホールマーケトプレイス

ダウンタン高層ビルから望む街並み

フェンウェイ・パーク/右奥にはグリーンモンスター
  (2008.9.15/村井亮治)