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原美術館
 原美術館は品川の閑静な住宅街にある現代美術専門の小美術館である。1979年の開館以来、独自の企画による先進的な活動が注目を集めている。この美術館でまず目を引くのが、その建物である。1938年にもともと邸宅として建てられたもので、設計は銀座のランドマークとなっている旧服部時計店を設計した渡辺仁である。当時最先端だったヨーロッパモダニズムの建築で、レトロな中にある洗練されたデザインがすばらしい。外壁に張られた白いモザイクタイルは、今見るととても新鮮に見える。緩やかに湾曲した建物に小規模な展示室が並ぶが、それらの小空間をうまく活用した展示方法がこの美術館の大きな魅力となっている。特に常設展示作品は、住宅として使われていた名残のような空間との融合が図られ、この美術館の見せ場となっている。

 この美術館のもう一つの魅力はミュージアムショップである。近年のアートブームを牽引する要因として各美術館のミュージアムショップの充実が上げられる。特に、原美術館のミュージアムショップは評価が高く、アート鑑賞と同じくらい楽しむことができる。また、広い中庭に面したカフェも、都会の喧騒の中で贅沢な時間を過ごすことができる魅力的なスポットである。展覧会の作品をイメージして作られる「イメージケーキ」という面白いメニューもあり、舌でもアートを楽しむことができる。

 近年、現代アートは概念そのものが大きく変化し多様化してきている。このため、現代アートのあらゆる作品を展示できる空間を造ることは不可能といえるだろう。しかし、アートは展示される空間との関係性の中で作品が生きもすれば死にもするのである。この原美術館は美術館として建てられたものではないけれども、その良い関係性を見ることができる。それはもともと上質な住宅だったという歴史が、展示空間として主役でもなく脇役でもない魅力を生み出しているからだろう。もちろんその魅力を引き出すための学芸員の方々の努力も忘れてはならない。









  (2007.1.9/堀内 研自)