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長屋の再生


−大阪市中央区空堀商店街−

 スペーシア・メールマガジン97号(040322)で「コンバージョン」について記述した。最近、NPO法人「京町家再生研究会」事務局長の小島冨沙江さんや京都府大助教授の宗田好史氏にお会いする機会を得た。京町家は近年急激にその数を減らしているが、「長年に亘って、京町家の中に蓄積されてきた暮らしと建物の様々な知恵や工夫を再評価し、それを現代に生かす形で町家を継承していくこと」(同会パンフレット)を目的として、平成4年以来(NPOはH14.11に認証)活動している。このような時間的蓄積の中に込められた人々の生活の知恵は、今日の経済合理性で図れない何かを包含しているのを直感する人々とがいて、これからの人口減少時代における持続可能社会の雛形を求めた結果が京町家の再生に繋がっていったのでろう。

 これとほぼ同時期に大阪市大助教授の橋爪紳也氏が編著の「大阪 新・長屋 暮らしのすすめ」(創元社)が刊行され、それを手に取った。私自身、大阪出身で長屋や文化住宅、はたまた超ミニ住宅群(敷地20坪程度)は生活空間の一部であったので、懐かしく読んだ次第。この本でも「長屋」ではなく「長屋暮らし」に焦点をあて、既成市街地の大部分を占めていた「長屋での暮らし方の知恵」は、これからの都心居住の魅力にとって不可欠と判断している。

 以上の経緯があって、橋爪氏の紹介を得て、大阪中央区の空堀商店街界隈の長屋再生に取り組んでいる「からほり倶楽部」(代表理事 六波羅雅一氏)へ、名古屋の長屋再生のヒントを求めに出かけた。
 多くの長屋は露地(私道)に面しているので、個別住戸ごとの建替えは許可されず、朽ちて行くままに任される。そして都心部の人口は減り、衰退していくのみであるが、それに「待った!」をかけたのが「からほり倶楽部」である。第一弾となった「惣so」は、地主には長屋に対して新たな投資をする気はないので、「倶楽部」がサブリース方式で借り上げ、テナントを集めて管理・運営する方式をとっている。長屋2戸分(延床面積30坪)を5つのテナントによる複合ショップとしている。第二弾の「練Len」は長屋でなく御屋敷(敷地200坪)を10店舗+ガレージ再生3店舗によって構成されている。規模が大きくなればそれだけ改修にかかる費用も大きく、テナントから集める保証金を投入するだけでは足らなくなる。資金調達は大きな課題である。
 長屋等の単体を扱うだけでなく、ハード・ソフトを含めたまちづくりの視点から、「長屋ストックバンクネットワーク」が立ち上がった。長屋等の「防災力・防犯力・耐震性の向上」と「長屋コミュニティの円滑化」を図ろうというものである。
 長屋等の再生の要諦は、@形を作ること(長屋再生を目に見えるようにする)、A地域に密着すること(居住するのが望ましい)、Bつきあいのネットワークをつくること(からほりまちアートの開催を通じて知り合いになっていく)である。地域との信頼関係なしでは長屋の再生は難しい。
第三弾として「萌Hou」のテナント募集が始まっている。この3つが揃えば、ポパイのように力が湧き出る。「萌」「練」「惣」なのだから。


昼間も賑わう空堀商店街

 「惣So」の外観


「練Len」の外観


「練Len」のガレージ再生3店舗


 「練Len」の内観


長屋再生事例


長屋再生事例


町工場再生事例


典型的な長屋露地


   (2004.5.17/井澤 知旦)