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環境行政とまちづくり−中郡大磯町・湘南国際村・鎌倉市−
(社)地域問題研究所一泊移動ゼミナール(1998.11.5〜6)

 【はじめに】

  • お馴染みの地問研の一泊ゼミである。今回の一泊ゼミへは、環境施策を住民主体で行っている先進事例であること、同世代の自治体職員との人脈をつくることの2つを目的として参加した。

  • 名古屋から神奈川までバス移動のため少々辛かったが、スケジュールに余裕があり、予想以上に充実したものとなった。

【大磯町】「住民主体のまちづくり・環境づくり」

説明:企画政策室参事 渡邊氏、室長 武藤氏、補佐 松本氏

 バブル崩壊後の別荘の跡地問題、西湘バイパス整備による環境悪化等の反省から、環境政策を中心としたまちづくりを自分たちで見直そうと、1996(H8)年度から2カ年、町民参加を基本とした4つのまちづくり研究会(環境基本条例、海岸地域、ごみ減量化・資源化、河川浄化)を発足させた。1998(H10)年度には緑化の研究会も発足している。まちづくり研究会の発足は、町民と町職員の対話を通じたまちづくりに対する意識の向上、及び町民が直接携わることで実効性が高い計画をづくりを行うことを目的とした。

 広報により町民に呼びかけ、31名の方にボランティアとして参加してもらい、4つの研究会に分かれて議論した。研究会には、参加した町民とほぼ同数の町職員、またコーディネーターとして法政大学の舩橋先生、アドバイザーとして県の自然環境保全委員の方等を招き、研究会の舵取りをしてもらった。町議員、商工会メンバー等は入れていない。

 町民が参加しやすい時間帯を優先したため、勤務時間後の開催が多くなった。町民の方は言いっぱなしではなく、研究会の成果として毎月「まちづくり研究会だより」を、年に1回報告書を発行している。どちらかというと町職員が引っ張られる形で進むことが多かった。

 研究会のテーマのひとつである環境基本条例は、1998(H10)年3月の議会では残念ながら否決されたが、同年12月あるいは翌年3月議会では可決すると思われる。これは国の基準よりもかなり厳しい内容のものである。

【湘南国際村】「自然と調和した国際交流拠点」

説明:鰹テ南国際村協会 池田氏、坂下氏

 当地区は、昭和30年代にゴルフ場であったところが閉鎖され、その跡地を活用しようと1985(S60)年に県が主体となって基本構想を策定した。1990(H2)年に基盤整備事業が開始され、少々遅れ気味だが、今ではようやく村らしくなってきた。現在、国際村全体で労働者が620人、居住者が400人、利用者が22万人/年である。

 地域貢献をひとつの目的としており、露地野菜や魚は全て地元から調達し、雇用者も地元から率先して受け入れている。

 湘南国際村センター内の国際会議場は、100回/年程度利用されている。センター内には宿泊施設もあるので、複数日に渡って利用される事も多い。宿泊施設の稼働率は約6070%と比較的高い。

 国際村の計画的なまりづくりを進めるため、開村当初から「湘南国際村まちづくり協議会」を設置し、建築協定、緑地協定の制定や交流事業のの推進などを行っている。これは、湘南国際村協会の他、神奈川県、横須賀市、葉山町、三井不動産、かながわ学術研究交流財団によって構成されている。

 住宅は全て戸建、敷地面積が平均250u、7,000万円前半で三井不動産が販売している。7割以上が神奈川県内からの居住者、全体の2割が退職された方である。都心へのアクセスは、バスでJR逗子駅に出て乗り換え。バスの本数は少なく住民はやや不便と感じている。 

【鎌倉市】「環境自治体の創造」

説明:企画政策課 井上氏、若林氏、環境自治体課 谷川氏

 鎌倉市は古都としての美しい風景と豊かな自然環境を保全するため、開発抑制をしながら人口を増やす施策を行ってきた。市域の55%が風致地区、地区内の44%が古都保存区域に指定されているため、建ぺい率(40%以下)や建築物の高さ(基本的には8m以下)等の厳しい規制がかかる。これらの規制により、建物の高さが周辺の山の稜線を超えなくなり、相模湾から望むと隣の藤沢市との違いがよくわかる。

 計画的な土地利用と市民参画(参加ではない)によるまちづくりを進めるための基本的なルールを定めた「鎌倉市まちづくり条例」を1995(H7)年度に施行した。条例の柱のひとつとして、市民主体のまちづくりへの支援をあげており、現在、市内3ヶ所で市民が策定している「自主まちづくり計画」を行政として支援している。

 行政改革のひとつとして環境自治体課を設立した。これはあらゆる行政施策の中で「環境」の視点をもたすことからこの名とし、横のつながりを強化するために企画部の中に配置している。

1996(H8)年2月に環境基本計画を策定した。計画策定にあたり審議会を設け、15名中5名を一般市民とし、資料づくりにも市民が参加している。環境基本計画は、地球温暖化防止のためCO2排出量の20%の削減やごみの発生量の20%の削減など18項目を目標にあげ、2025年を展望しながら、2005年に向けての計画としている。また項目毎の結果を「かまくら環境白書」として毎年発行している。20%削減など目標値をあげることに対しては議論したが、基本的には市長の意向であげることとなった。

【雑 感】

 大磯町及び鎌倉市職員の方の話を聞く限りでは、住民の自分たちのまちに対する思い入れや環境に対する意識が高いと思われる。参加した自治体の方の意見もやはり同じだった。また説明後の質問では、「議員や商工会の人は、なぜメンバーに入れなかったのか?」「住民が参加する会議を夜行う場合、自治体職員の残業代は?」など、実務者らしいものも多く出された。

 鎌倉市は市長のトップダウン方式と市民の行政への強い要望に対して、市の職員がそれにきちんと応えているようであり、自治体としてのレベルの高さを感じた。

 湘南国際村は博覧会跡地のイメージにややつながるところがある。宿泊を伴う研修や会議として利用するには、施設の充実に加え、海や山もありシチュエーションが非常に良いところであるが、それ以外の人には疎遠なところであるように感じる。地元住民がどう思っているのか知りたいところだ。

 自治体からの参加者は16人。自分より年輩の方(課長、課長補佐、係長、主査クラス)が多く、同世代は残念ながら2人だけであった。仕事以外で自治体職員の方と知り合う機会は少ない(瀬戸市を除く)ので、これからつきあいを深めていきたいと思っている。

  (加藤 達志)