2018年3月19日より「太陽の塔」の内部公開が始まった。太陽の塔とは、大阪府吹田市万博記念公園に建つ建造物で、1970年の大阪万博のテーマ館の一部として制作された、芸術家岡本太郎の作品である。公開に向けて大阪府は「太陽の塔内部再生事業」を実施し、耐震改修工事と内部展示物の復元を行うとともに寄附金を募った。復元にあっては、岡本太郎のパートナー岡本敏子の甥であり、岡本太郎記念館館長の平野暁臣氏をプロデューサーに置いた。内部が常時公開されるのは48年ぶりであり、入館人数が限られることから現在は予約制となっている。
私も一般受付が開始されたころに予約をし、5月26日に見学をしてきた。予約時間は30分毎、15人前後のグループで館内を巡る。ポイントごとに立つスタッフにより鑑賞時間が管理され、人が滞留しない仕組みになっていた。「地底の太陽ゾーン」のプロジェクションマッピングや、「生命の樹ゾーン」の生物オブジェ一つ一つの動き出しそうな質感や、閉鎖期間の長さを象徴するオリジナルのままの風化したオブジェの演出など、衝撃を受けた展示はたくさんあったが、その中で特に印象に残ったのは太陽の塔の「腕」である。
胴体中央辺りから生える円錐状の巨大な腕は、片側だけで約25mの長さがある。万博開催当時、左腕(向かって右の腕)には避難階段が、右腕(向かって左の腕)にはエスカレータが設置され、当時太陽の塔を囲むように存在した「大屋根」(丹下健三設計)に出られるようになっていた。現在は出入り口はふさがれ、通行もできないが、その内部構造が見学できる。腕の根本から先端まで伸びるように16本の鋼管が並び、それを鋼材が円状につなぐ。変形しないよう筋交いが走る。その光景は近未来のように空想的であり、同時に土木構造物のような確実性を感じた。根本内部から細くなる先端を見上げると、果てなく続くトンネルのように見えるのである。生命の樹とは対称的にあまりに無機質で技術力を呈したこの腕は、当時、ますます進歩する技術と、人類の生物としての根源の不変さを強調しながら、人々を大屋根の空中展示「未来:進歩の世界」へと送ったのだろう。当時は、地下展示、生命の樹、空中展示、地上展示が一連の見学ルートとなるように設計されていたようである。当時全てを体感できた見学者をうらやましく思う。
愛知県犬山市には「若い太陽の塔」がある。岡本太郎設計により、太陽の塔建設の1年前1969年に日本モンキーパーク内の丘の頂上に建てられた。生命力を象徴する鮮やかなカラーリングは生命の樹と似ているが、太陽の塔と比べ軽やかな外観で、カーブする三本足は今にも動き出しそうである。
岡本太郎はこうした立体作品を多く残しており、パブリックアートとして公開されているものもある。まちなかに浮かぶ独特な顔の違和感と、何かわからずとも感じる強烈なメッセージ性を体感してみてほしい。
「太陽の塔」公式サイト(見学予約はこちら)
http://taiyounotou-expo70.jp/ |