少し前の話だが、東京出張のついでに小江戸・川越を訪れた。川越は東京都心から1時間圏内にある重要伝統的建造物群保存地区で、明治26年(1893)の大火後に商人達が防火性の高い蔵造りを取り入れ、重厚な蔵造りの商家と大正以降の近代洋風建築も含んで独特な歴史景観が形成されている。毎年10月に行われる川越氷川祭の山車行事は、2016年にユネスコ無形文化遺産に登録され、周辺には23両の山車がある。来訪者向けのお店も建ち並び、平日の昼間ながら多くの観光客が多く訪れていた。
ここまでは川越の簡単な観光情報だが、現地を訪れて気になったのは道路空間である。片側一車線の道路と両端の歩行者空間は舗装で区別しているだけで、歩道のマウントアップもガードレールのような防護柵も全く設置されていない。自動車の通過交通量が多く、一見すると歩行者のすぐ横を自動車が通過するので事故にならないか心配だが、よく観察してみると南北約430メートルのメインストリートの中央あたりに押しボタン式信号があり、ここの信号がよく変わって歩行者が横断するため、すぐに自動車が渋滞の列をつくるようになる。結局、自動車はあまりスピードを出せず、歩行者も比較的安心して通過することができる。このような空間に似た例としては、以前にこのメールマガジンで紹介した京都・姉小路界隈にも見られる。姉小路では、生活道路で歩行者と自転車空間を生み出すために路側帯の幅を広げて自動車の通行帯を狭くしている。
愛知・名古屋では、「名古屋走り」「三河走り」と言われるくらいドライバーのマナーの問題もあって、このような道路空間の整備に今すぐ踏み切るのは難しいだろうが、市街地も歴史的な町並みも、歩行者中心の道路空間に戻す時期にそろそろ踏み切るべきだと思っている。 |
川越 蔵造りの町並み |
歩行者をよけながら通過する自動車 |
メインストリートの中央にある押しボタン式信号 |
メインストリート沿いにある自転車シェアリングの駐輪場(ポート) |
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