北海道には総合振興局、振興局という行政区画があり、道内14か所に道庁の出先機関が置かれている。この14地区のうち9地区に12の空港がある。オホーツク総合振興局のオホーツク紋別空港は平成11年(1999)11月に現空港が開港した。かつては新千歳空港や丘珠空港など道内の空港への路線もあったが、現在は羽田空港とを結ぶ便が1日1往復しているのみである。航空路線の維持確保及び航空機の利用促進を図るため、オホーツク紋別空港発着便を利用した紋別市民とその家族を対象とした補助制度が設けられている。
オホーツク海に面する紋別市は流氷のまちとして知られる。流氷が海を覆い漁船を出せないことから漁師にとって厄介者とされてきた流氷を観光資源にするため、1987年、流氷観光砕氷船「ガリンコ号」が就航され、流氷の海を体験することが可能になった。毎年1月から3月中旬には流氷観光のため多くの観光客が訪れる。
流氷は、アムール川を通って運ばれたシベリアの雪解け水がオホーツク海で凍ることで出現するが、この水には多くの養分が含まれている。それを餌にプランクトンが集まり、プランクトンを餌に魚が、魚を餌にアザラシや海鳥が、というように、オホーツク海には多くの生き物が集まる。「とっかりセンター」は、紋別市ガリヤ地区にある国内唯一のアザラシ専門の保護施設である。昭和62年(1987)に開設され、空港移設と同時期の平成11年(1999)11月に現在の場所に移転した。平成27年(2015)9月には、紋別空港の利用促進と着地型観光の促進を目的として、アザラシシーパラダイスがオープンし、アザラシと間近で触れ合えることから、SNSをきっかけとして国内の各種メディアや海外の新聞にも取り上げられ話題となっている。飼育スタッフは他県から移住してきた若い女性がほとんどであり、わずかながら若者移住のきっかけとなっている施設でもある。
ガリヤ地区にはとっかりセンター以外にも、氷海展望塔「オホーツクタワー」や流氷科学センター「GIZA」などがあり、冬の観光拠点となっている。観光シーズンにはこうした市内の観光施設と宿泊施設を結ぶシャトルバス「ガリヤ号」が運行している。観光シーズンのうちガリヤ号の運行していない時期(平成29年は3月1日〜3月31日)には「初乗りハイヤークーポン」が発行される。市内のホテル宿泊者や指定店で2,500円以上の利用者に発行され、指定のハイヤー会社で初乗り料金が無料となる。鉄道のない紋別市において、足のない学生や雪道が不安なドライバーにとっては、うれしいシステムである。
紋別市は、かつて負の資源であった流氷を活用し、見事に観光地としての知名度を上げた。観光客向けの交通システムや各施設の豊富な体験プログラムは、これからも話題を呼ぶだろう。観光・交通・移住などさまざまな面で発展途上な紋別市のこれからが楽しみである。
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羽田便到着の様子/オホーツク紋別空港 |
えさの時間/とっかりセンター |
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