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魅力あるまちづくりは、新たな挑戦から/福井県鯖江市視察
愛知住まい・まちづくりコンサルタント協議会の2016年4月交流会で、福井県鯖江市を訪れた。当市は近年、JK課やゆるい移住など、市民を巻き込んだ行政施策で注目を集めている。また、移住者を中心に鯖江市の伝統工芸品に新しい価値を生み出そうとする活動が行われている。今回の視察では、市役所で取り組みの背景や効果について詳しい話を聞くとともに、現在鯖江市の将来を担う移住者のものづくりの現場を見学した。
平成26年4月、鯖江市役所に市内の女子高校生を役員とした「JK課」が開設された。鯖江市独自の制度である「提案型市民主役化事業制度」は、「市民主役条例」(平成22年施行)に基づいて行われるものであり、市民が公共事業の一端を担うことにより、公共サービスの充実と市民の市政への主体的な参画を図ることを目的としている。「JK課」は、一般的にまちづくりに対して最も関心が低いとされる女子高校生を引き込むことで、より効果的に市民を市政に巻き込もうとした施策である。当課の企画会議では、高校生同士が日常会話の要領で議論することにより、より柔軟で身近な課題に取り組み、その斬新なイベントの数々から市民やメディアから大きな反響を得た。平成28年3月までの2年間で、ゴミ拾い企画「ピカピカプラン」や図書館空席状況確認アプリ「サボタ」の開発など、全43のイベントを開催した。今年度も活動予定である。
鯖江市の人口は、昭和30年の市の発足以降増加傾向にあるが、近年若者の転出は大きく、将来的な生産年齢人口の減少は避けられない状況である。そこで鯖江市は平成27年7月、「ゆるい移住」計画を立ち上げた。これは、県外の若者を対象に募集をかけ、市役所が用意した住居に共同生活させるという体験移住事業であった。参加者に対し仕事のあっせんや体験プログラム等は一切なく、月に1回ワークショップに参加することのみが条件として与えられた。移住期間は平成27年10月から平成28年3月までの半年間(6か月のうちいつ移住するかは個人の自由)、参加人数は17名であった。参加者は自ら積極的に鯖江市の企業や市民団体と交流するようになり、地元住民を交えて交流会を開催するなど、行政職員の期待を超えたコミュニティーを生んだ。
当市の河和田地区は越前漆器の産地である。デザイン事務所「TSUGI」と木工工芸所「ろくろ舎」は、平成26年、福井新聞社の企画「ふくいフードキャラバン」に参加し、「食」をテーマに鯖江市のPRイベントを行った。これは将来的な福井の北陸新幹線開通に向けて、地元の魅力を市民自らが観光客に伝えられるようにと、“市民自らが魅力を再発見する”というコンセプトのもと行われた。開催にあたり多くの職人や地域住民の協力を得て体験型のイベントとしたことにより、ただ生産するだけの伝統工芸の町ではなく、独自性のある町であるということを、市民・主催の両者ともに再確認できたという。
今回話を伺った、市役所と移住者の取り組みは、行政職員や鯖江市民の意識変化につながったことが大きな成果であったといえるだろう。特にJK課やゆるい移住は、これまで行政の施策としては前例のなかった取り組みであり、具体的な成果の見込めない事業であった。それでもわずかでも変化を求めて挑戦したところ、職員も思いもしなかった嬉しい誤算があり、鯖江市の魅力向上につながった。魅力的なまちづくりのためには従事者の意識改革が、意識改革のためには新たな挑戦が必要であるということがわかった。
牧野鯖江市長が率先して“新しい政策”に取り組んだ
ふくいフードキャラバンのPR映像を見る(Youtubeで視聴可能)
ろくろ舎工房では木の椀や鉢植えを製作している
(2016.5.9/日高史帆)