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 京都・姉小路界隈のまちづくり

  姉小路界隈(あねやこうじかいわい)は、京都の中心市街地、御池通と三条通の間にある姉小路通を軸とし、東西を烏丸通と寺町通に囲まれた地区で、20年以上にわたり景観まちづくりに取り組んでいる。今月、姉小路を訪れる機会があり、その様子を報告する。
 この界隈は姉小路界隈を考える会の事務局長・谷口氏が「姉小路盆地」と称しているように、エリアの外側は中高層の建物が建つがその内側にある姉小路界隈では低層の木造建物が集積し、“都市の中の盆地”を歴史的に形成してきた。現地を歩くと、町家がそこかしこにあり、著名人の筆による看板が掲げられた老舗店舗が幾つもあるなど歴史が感じられ、地元のまちづくり通信や後述する「町式目」や貼られた家屋を見かけるなど地域の人々にまちづくりが浸透している様子がうかがえる。
 そのような中でマンションの建設問題が起こり、それをきっかけに1995年に姉小路界隈を考える会が設立された。その後、江戸時代から続く家の土蔵から「町式目」(江戸時代の町ごとに自治ルールを定めたもの)が見つかり、それを参考に2000年にまちづくりの基本理念として「“平成版”町式目」を定めた。この基本理念が、2002年に定めた建築協定へと発展した。建築協定で定めた主な内容としては、深夜営業のコンビニの建設禁止や、家主が同居しないワンルームマンションの建設禁止があげられる。なお、当初白紙撤回されたマンション事業者とはその後も意見交換を重ね、当初11階建ての分譲マンションだった計画が、地域との意見交換を経て8階建ての賃貸マンション「アーバネックス三条」へと変更され、建築協定を締結した年と同じ2002年に竣工した。
 その後は、国の街並み環境整備事業により2004〜2014年度までの10年間で26軒の建物を伝統的な外観に戻す修景整備を行った。それと並行し、2013年には風俗営業店やカラオケボックスなどを規制する地区計画が都市計画決定された。このように地域の方々により長年、町並み保全・形成活動が続けられていく中で、京都市の景観制度に基づき2014年に地域景観づくり協議会(考える会が兼務)に認定され、2015年には「地域景観づくり計画書」を提出し、市に認定された。この認定を受けたことにより、この界隈で建築行為、営業行為、屋外広告物の設置等を行う場合には地元の協議会、町内会等と意見交換を行うことが必要となった。
 景観保全・形成以外では、1997年から夏の地蔵盆の時期に「姉小路行灯会」を開催して行灯を通りに灯したり、あるいは歩行と自転車空間の整備として路側帯を拡幅するなどしている。これらの活動は、相当前から官民が連携して取り組まないと実現しないものである。
 アーバネックス三条のように調整が実を結んだ例もあれば、一般に多く見かけるように地元との協議にも応じてもらえず当初計画のまま高層マンションとなってしまった物件もある。地元の方々の強い思いや危機感の中で、建築協定、地区計画、地域景観づくり協議会・計画書作成と、二重・三重と網をかけることとなったが、これらは派生する問題に次々と取り組んできた結果である。改めて、地域に関わる人々(官民とも)がまちづくりに対する方向性を共有することの重要性を知り、貴重な視察となった。

姉小路界隈の西の入口 
左側は著名な書家の筆による看板がかかる老舗店舗
通りは路側帯が広げられ、自転車通行帯(一方通行)も描かれ、
自動車の通行帯が普通車でも車幅ギリギリに狭められている。

姉小路界隈を考える会のまちづくり通信(最新号)が貼られた建物

”平成版”町式目が掲げられた建物

修景された町家

姉小路通と交差する高倉通、写真奥に高層マンションが見える  

室外機を覆う簡易な修景がされた家屋も
(2016.9.26/浅野健)