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85年前につくられた環境共生住宅「聴竹居」/京都府大山崎町
先日、京都の歴史ある近代建築の視察ツアーに参加する機会を得た。訪れたのは、聴竹居、大山崎山荘、東華菜館、京都国際会議場、旧玉ヶ池プリンスホテル(茶室)だが、中でも私自身初めて訪れて感動した『聴竹居』についてご紹介したい。
『聴竹居』は、京都府大山崎町の天王山山麓、静かな竹林に囲まれたところに、建築家・藤井厚二が昭和3年(1928)に建築した第5回目の「実験住宅」(自邸)である。(一般に「実験住宅」とされているが、藤井氏が「実験住宅」と記述した記録はないそうである) 「実験住宅」は5軒つくられたので、この『聴竹居』が生涯にわたって環境共生住宅を追い求めた藤井氏の集大成といえる。
ボランティアで建物の管理等をされている聴竹居倶楽部のたなべ氏より、建物について解説をいただきながら見学した。(この方の解説が非常に解かり易く、知識の豊富さに感銘を受けた) 『聴竹居』は今から約85年も前の建物ながら、オール電化、パッシブソーラーの概念を実現している。温度の安定している地中にパイプを通して、流れる空気がパイプ内で熱交換し空気を冷やしたり暖めたりする「クールチューブ」の仕組みも実際に見せていただいた。断熱性に優れた土壁や瓦の採用や、南に面した縁側は軒先と窓の上部のすりガラスで日射を調整するなど、自然を取り入れながらも快適に暮らすための工夫が随所にみられる。
照明や家具はすべて藤井氏のデザインで、棚や机や椅子など作り付けの家具が多い。デザインに対しても妥協がなく、例えば、居室と分節するための食事室のアーチ窓は、気に入るアーチの形ができるまで5回は職人に作りなおさせたそうだ。また、居室にある3つの天井照明は同じデザインとし、居室の隅(調理室側)に立って見たときにすべて同じ大きさに見えるよう少しずつサイズが変えられている。食事室の床は食事中の様子が外から見えないように一段高くなっているし、居室とつながる座敷も、居室(洋室)の椅子に座った人と座敷に座った人の目線が合うように座敷部分が30センチ高くつくられている。環境共生住宅を実現しながら、住む人が住みやすい住宅も実現されており、今見ても新鮮なつくりであった。自然を取り入れながら快適に暮らすすばらしさを改めて考える機会になった。これまでに大きな改修や修繕は行われていないそうだが、所々痛んでいる部分も見受けられ、保存に向けた修繕が検討されているとのこと。すでに文化財としての価値もあるが、一方で文化財に指定されると修繕が難しくなるといった話も出ていた。日本で最初に環境共生住宅を志向した建築家ともいわれる藤井氏が残したこの『聴竹居』が、少しでも長く残されることを願いたい。
聴竹居外観(南面)
縁側(サンルーム)
角に柱がなく景色が見渡せる縁側
座敷下には地中までのパイプが通る
食事室
居室の天井照明
(2015.2.18/喜田祥子)