直島とは、瀬戸内海に浮かぶ小さな島で、本州からだと岡山県からフェリーに乗って20分ほどで渡ることができます。この島では1980年代から、ベネッセコーポレーション(当時は福武書店)により文化的事業が進められてきており、2004年安藤忠雄設計の地中美術館の完成をもって、コンテンポラリーアートが集積する文化村として世界的に知られることとなりました。しかし、以前の直島は金属の製錬所があり、その影響で島の北側ははげ山になるほど環境破壊が進んだところでした。また、隣の豊島でも、数年前に60万tに及ぶ産業廃棄物の不法投棄が見つかり大きな社会問題になりました。こうした場所で、「自然と共存するアート、歴史や生活とともに行き続けるアート、そこに多様な人々が関わりあえる空間」の創造をめざし、さまざまな取組みが行われています。
島には大きく2ヶ所のアートスポットがあります。1つはかつて城下町として栄えた本村(ほんむら)、もう1つはベネッセの美術館や宿泊施設がある「ベネッセハウス」周辺です。本村では、民家や宗教的な空間を利用し建物と一体となった作品展示を行う「家プロジェクト」が進められており、現在4つの作品が完成しています。村には案内板がないため、立ち止まって地図とにらめっこをしていると、「こっち!こっち!」と声をかけられます。各施設には島のボランティアが常駐しており、親切にサポートをしてくれます。アートを通じてそうした島の人々と触れ合えたことがとてもうれしく思いました。最近では、島へ移住し店を開く若者も現れ、アートが様々な人々による新しい交流を生み出している成果が見えてきました。
「ベネッセハウス」周辺は「地中美術館」を含め安藤忠雄設計の建築群が特徴です。自然地形を生かして建築をいかにはめ込むかは、安藤の最も得意とする分野でその魅力を充分堪能できます。特に「地中美術館」は建物自体がアート作品というだけあって、今までの安藤建築の集大成ともいえる空間です。「ベネッセハウス」は美術館と一体となった宿泊施設で、宿泊者は夜の9時ごろまでアートを楽しむことができます。夜の静まり返った美術館では、一対一でアートと向き合える贅沢な時を過ごすことができます。
今後も島には作品が増え続けるようで、今秋にはフェリー乗り場がある宮浦港に、SANAAによる海の駅「なおしま」も完成しました。この建物は、極限まで切り詰められた細い柱と薄い屋根が特徴で、まるで針と紙でできているかのような錯覚を覚えます。私が訪れたときは、ちょうど落成式が行われており設計者の妹島和世・西沢立衛も出席していました。
このレポートでは、あまり作品についてはふれませんでしたが、直島にあるものはどれも世界レベルの作品なので、実際に体験していただくことをおすすめします。
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