スペーシアレポート
大須301ビル誕生!!
浅野 泰樹 & 村井 亮治
大須301ビル
昨年の12月5日、名古屋でもっとも元気のある「大須商店街」で進められてきた「大須30番第1地区第一種市街地再開発事業」による再開発ビル「大須301ビル」の竣工式が行われた。名古屋市長をはじめ、多くの関係者が出席し、ビルの完成を祝った。
大須30再開発は、過去この紙面でも紹介してきたように、隣接する第2地区の個人施行(万松寺駐車場ビル平成15年竣工)と一体的に都市計画決定を受けて進められたユニークな市街地再開発事業で、名古屋市内初の組合施行である。施設面では、異なる施行者間の調整によりビル相互の来館者の往来や各種の設備等が一体的に機能するよう工夫されている。
大須301ビルの商業床は、路面店の良さを残した権利者店舗からなる1階「大須名店街」、ごった煮のまち大須の魅力をビル内に持ち込んだ2階「大須バザール」、以前から話題となっていた3階の「大須中華街」から構成される。なんといっても話題は、中部圏初の中華街である。四川や北京など、中国各地方の飲食店が12店舗集まっている。その中には、権利者自ら中国・南京市を訪問し調整を進めてきた直営店舗もあり特色をだしている。中華街フロアの内装は、朱色を基調とし、獅子の置物や龍の装飾など、中国の商店街をイメージした造りとなっている。
翌6日は、商店街の人々が見守るなか、再開発組合役員等による銅鑼の音とともにビル壁面に設置されたモニュメントの龍が姿を現し華々しくオープした。待ちわびた多くの人々で賑わい、ビルが面する万松寺通商店街では、1年で最も賑わうお正月のような人出となり、人の波を掻き分けながらでもしないと前へは進めないほどだった。中華街は、各店舗とも開店直後から満席となり、順番待ちをする人の長蛇の列と通路を行きかう人でごった返し、冷房を入れるほどの盛況でオープン後もこの状況が続いている。大須という庶民的なエリアで本格的な中華料理が楽しめるということで、大須に魅力がまた1つ付加された。
再開発への期待感
再開発の評価を云々するには時期尚早であるが、名古屋駅前や栄の再開発に比べ、規模的には小粒な事業が大きな反響を得たことは、栄南・大須への客動線が今まで以上に強まり、市が進めてきた都心南北軸強化に繋がるものと期待できる。また、大須商店街では、多くの建物が更新時期をむかえているといえども、弊社が大須に関わり始めた平成2年以降にはほとんど見かけなかった商店の改装・建替工事が、大須301ビルの工事着手以降、一気に随所で行われるようになった。再開発による集客への期待感が、周辺の建物更新に少なからず影響したのではないかと思われる。
権利者等法人による管理運営への期待
今後は、権利者が中心となり保留床購入者とともに出資して設立されたビル管理法人「大須商業開発株式会社(略称OCD、平成14年9月商業登記)」が、2・3階の共有権利床の賃貸経営者かつ商業・業務床の管理受託者として、また、都市型マンション44戸の管理者として、ビル全体の管理運営にあたる。OCDの構成員は、自己の店舗経営にはプロであっても、ビル管理・運営には素人集団である。商店街の一員ではあるが、一国一城の主としてある意味自由な経営に慣れてきた。大須301ビルという運命共同体に身を置くことへの戸惑いが見られるものの、商業面での管理・運営の専門家の意見を採り入れながら、急速にその意識を変え始めている。大型資本に頼らない、中小専門店40店舗の集合体として、魅力を保ち続けるには、OCDのこれからの運営力が重要になる。
構想段階から13年、経済情勢等の変化により計画内容は大きく変わったが、「権利者の手づくりよる再開発」という当初の精神は今も受け継がれている。竣工式の挨拶で、再開発組合理事長でOCDの社長でもある松下和義氏は、権利者の夢とロマンをかけて完成した「大須301ビルにあきんど商人の魂を吹き込み、生き生きとした商業ビルとして長く人々に愛されるソフトをいかに組み込むか、その真価が問われるのはこれからです。我々権利者は、テナントさんと団結し、これからが本当のまちづくりという認識のもとに、挑戦を続けて参ります。」と力強く語った。