スペーシアレポート

産業文化ゾーン西区
〜住民の力がまちを動かす〜

藤澤 徹

◆ゾーン内での官民の協働

西区には名古屋のものづくりの原点となる物語があることは周知されつつある。これまでに産業文化に沿ったテーマのもと「ものづくり文化の道」の整備の検討が進められている。しかし、多くの人々を呼び込めるだけの地域資源の掘り起こしが十分でないことと、ハード的な施設と地域との連携が少ないことが課題となっていた。それらの問題を解決しようと過去3年間、西区役所が媒体となり企業や区民を巻き込み、さまざまな小懇談会や企画会議を実施してきた。ネットワークを通し、これまで地域の活動に関心の無かった人々の連携も徐序に深まり、さらに具体的な動きも出てきている。夏の円頓寺七夕祭りでは、去年に引き続き「ものづくり文化の館」が円頓寺商店街の一角で開館した。ここでの企画は、今年は、商店街の空きスペースを活用してできた「ふれあい館」を利用して開催された。名古屋友禅と名古屋扇子の職人の実演や、扇子づくりなどの技を体験できるコーナーが設置され、去年にもまして人気をよんだ。また、11月には産業技術記念館が主催する産業文化のゾーンを散策するウォークラリーの3回目が開催され、昨年の倍の300人が参加した。これらのイベントにはものづくりに携わる職人のほか、商店街に住む人、あるいは西区の取り組みに賛同する有志区民が数多く参加した。今後ますます発展しソフト面での集客装置として充実していくであろう。

◆産業文化ゾーン発展への可能性

地図

今後の西区全体の動向を考えたとき、都市再生緊急整備地区に指定され、魅力ある都市空間としての整備が始まる名古屋駅東地域は、国際交流都市名古屋の顔としてさらなる飛躍を遂げることが予想される。そこから北に広がる、ものづくり産業の集積を中心とした、産業文化のゾーンの注目度は俄然高まるであろう。そうしたときに、人の流れを呼び込み、滞留させ、交流させる機能の充実がますます求められる。ハード面とソフト面が足並みを揃えたベクトル合わせは、さまざまな要素から非常に難しいことも現実であるが、観光・交流といったテーマ性をもった地域コンテンツを、公民の連携等によりつくりあげていくことも一つの手法なのかもしれない。イベントに触発された動きも今後おこるであろう。行政側も、この地の新しい情報発信の手段を作ることを検討している。発信だけでなく、情報を創っていけることもこの地区の強みである。これからの産業文化ゾーンのさらなる具体化と公民一体でのコンテンツづくりに期待したい。

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