特集
都心に負けない地域の力
ユビキタスな町 いわむら
藤澤 徹
歴史のまちのみちづくり
岐阜県の南東部に位置する恵那郡の岩村町は人口5千人強で、日本3大山城の岩村城址や重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)選定の町並み、日本一の農村景観を擁するまちとして、にわかな話題をよんでいる。穏やかなメインストリートは、観光地として呼び名の高いような町のそれとは違い、気取りがない人々の住む生活や日常がある。岩村町は、2年後、恵那市をはじめ、同町を含む五市町での広域合併を控えている。町の担当者は、何とかそれまでに、岩村としての取り組みをこれまで以上に、外部にアピールしていきたいと考えている。
岩村の産業は、農業では全国でも首位の寒天業をはじめ、商工ではかつては製糸業など、新興産業としてのチョークの製造は全国生産量の五割を占めている。昨今では観光にも力を入れており冒頭でも述べた伝建地区の整備においては、県外からもまちづくり関係者が視察に訪れ、生活と景観の調和の先進地としての関心を高めている。
さて、そんな岩村のまちづくりの拠点となっている「いわむら町まちづくり実行委員会」は、岩村町の活性化に並々ならぬ熱意を燃やしている。いわむらファミリー・ウォークやいわむら城址薪能などの各種のイベントを主催し、観光の町岩村を盛り上げている。ボランティア組織が10年以上も存在しているその力、そして故郷を愛する心は、各地の同様の団体から注目されるところとなっている。
これらの動きに対して行政側は、外部とのコミュニケーションあるいは岩村を訪れる人たち、町民同士のコミュニケーションを活発にするための手段として、平成15年度から町内向けのインターネット接続サービスを目的とした、ユビキタスネットワーク整備事業に着手している。平成15年10月1日から町内市街部の一部でサービスを開始し、平成16年10月には町内のほぼ全域でのサービス開始を予定している。また、公共ネットワークも合わせて整備をしており、自宅でインターネットの接続環境の無い場合は、平成16年4月から最寄りの公共施設に設置するキオスク端末(タッチパネル方式により簡単に操作ができるコンピュータ)にてインターネット及び電子行政サービスの利用ができるよう整備を進めている。歩調を合わせるように、町内の民間企業も情報の発信に力をいれている。岩村の観光施設の拠点である、岩村山荘では、自らのホームページの整理をはじめとして、町内全体の活性化に一役かっている。これまでに、町全体のインターフェイスとして、ブロードバンドを利用した岩村新聞サイトのオープンや、地域のお土産屋さんに呼びかけて、岩村の物産展をサイト上で展開している。山荘の主人、堀井幸夫さんは、これからの岩村は、それぞれが単体だけでなく、町全体がネットワーキングしながら、アピールしていく必要があると語気を強めている。
合併にむけた各市町の動きは活発になってきている、その一方で、合併後のわが町の像を不安視する声もあがっている。岩村は、これまで以上に行政と町民との団結力を求めて、農の町にITというツールを持ち込んだ。果たして、それがどのようなまちづくりにつながるのかは分からない。小さな町、岩村が、最新の環境を整備してどのように変化していくのかこれからも注目したい。
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